出版社内容情報
プルースト[プルースト,M.(マルセル)]
著・文・その他
吉川 一義[ヨシカワ カズヨシ]
翻訳
内容説明
ヴェルデュラン夫妻が借りた海を見下ろす別荘と、そこへ向かう小鉄道で展開される一夏の人間喜劇。美貌の青年モレルに寄せるシャルリュス氏の恋心はうわさを呼び、「私」の恋人アルベルチーヌをめぐる同性愛の疑惑は思わぬ展開を見せる。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
166
★『失われた時を求めて』岩波文庫版全14巻完読プロジェクト、 https://bookmeter.com/users/512174/bookcases/11525156 今回は、第9巻『ソドムとゴモラⅡ』、全体の2/3まで来ました。正にソドム(ゲイ)とゴモラ(レズ)の巻でした。続いて第10巻『囚われの女Ⅰ』へ。トータルの感想は、全14巻完読後に。2020/02/14
lily
160
サロンは玉を転がす代わりに感情を転がし合いながら五感と精神を壊すパチンコみたいなもの。神経過敏なんだから尚更ね。見なくていいもの、聞かなくていいことまで取り込んで、すぐしょげかえって...残念ながら内向的な読者には価値が感じられませんね。だからこそ、読書で平穏に追体験できることに感謝。ピーク・エンドの法則を駆使してるのね。4章迄ピークを取っておいたんでしょ。「私」の器官が高らかに躍動して母、祖母の回想とも繋がる壮大な恋詩とその決意は読者を泣かせ、そうになるよ。2019/08/18
のっち♬
86
ヴェルデュラン夫妻が借りた高台の別荘での晩餐会と小鉄道が主な舞台となり、前半はシャルリュス男爵の同性愛を中心に進む。教授が繰り出す数々の語源説にはうんざりさせられるが、登場人物の言動の滑稽さはこれまで以上に引き立っており、受け入れられない「頑固者」たちの愚劣を暴いていく。中でも男爵の音楽家に対する欲情は凄まじい(偽りの決闘をでっち上げたり、盗み見をしたり)、かと思えばユダヤ人青年に昂奮したりと目が離せない。疑念と嫉妬から身勝手な嘘をつく「私」も中々に酷い。我執にかられ、幻影に弄ばれる人間の常態を描いた巻。2020/10/18
mii22.
54
上流社交界でのゲルマント一族の才気にはうんざりさせられたが、ヴェルデュラン夫妻がいう「少数精鋭」の集うサロンも滑稽でうんざりさせられる。そのなかで異彩を放つのは大貴族ながら、倒錯の権化とも一部で言われているシャルリュス男爵。美貌の青年ヴァイオリン奏者を庇護するも冷淡な態度をとられる姿には悲哀さえ感じてしまう。「私」は相変わらずの妄想と疑念で幻影ばかりを追い続けて、アルベルチーヌに対する愛情も常に揺れ動き、読み手としては理解に苦しむ。なんだかアルベルチーヌだけが普通の恋する女性に思えてしまうが...。2016/05/03
syaori
52
「お友だちっていうのは、ヴァントゥイユのお嬢さんなの」――劇的な急旋回! これまでも物語のなかで何度もある出来事やモノが「開けゴマ」の呪文になるのを見てきましたが、今巻末のアルベルチーヌの一言は何という「開けゴマ」なのか。開いたのはまさに地獄の窯の蓋。その落ち込んだ地獄、当時は「好奇心をそそる」としか思っていなかったモンジュヴァンの部屋の幻想のアルベルチーヌは、幻想であるがゆえに「私」の嫉妬を燃え立たせる。これは祖母を死なせた罰なのかという叫びと、燃え初める地獄の業火のような美しい朝日に慄きつつ次巻へ! 2017/08/03