内容説明
冬に向かうパリ、「私」をめぐる景色は移ろう―「花咲く乙女」とベッドで寄り添い、人妻との逢い引きの夢破れ、ゲルマント夫人の晩餐には招待される。上流社交界の実態、シャルリュス男爵の謎、予告されるスワンの死…。人間関係の機微を鋭く描く第七巻。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
168
★『失われた時を求めて』岩波文庫版全14巻完読プロジェクト、 https://bookmeter.com/users/512174/bookcases/11525156 今回は、第7巻『ゲルマントのほうⅢ』、折り返し地点、50%迄来ました。本巻は、官能恋愛篇です。続いて第8巻『ソドムとゴモラⅠ』へ。トータルの感想は、全14巻完読後に。2020/02/10
lily
143
接吻とは、友情とは、詩人とは、ゲルマント家とは、愛人とは...思索の大パノラマを数々の引用に乗せながら。私が求めたのは詩的な楽しみだけ。歴史的好奇心よりも審美的な快楽を求めたいのに...そんなプルーストの分身である「私」と自分との2人きりでの朝までカフェでの静かな語らいを夢想しながら...2019/08/16
のっち♬
92
前巻から2ヶ月後、「私」をめぐる3人の女性との意想外の出来事ではじまる。アルベチーヌと接吻する場面は、短い行程をズームアップして彼女の多様性を見たり、唇は接吻に適さない器官と考察したりと、官能の歓びとは程遠いドライさ。大半のページが割かれた晩餐会では、ゲルマント侯爵夫人の品位のない「才気」が発揮されるが、その作為的な演出に対する下準備が周到。親戚筋が絡んだ壮大な脱線や、芸術引用を多分に駆使した家柄自慢などは、いつになったら終わるのかと辟易した。スワンの死の描写は、祖母と対照的で素っ気なさが際立っている。2020/10/11
藤月はな(灯れ松明の火)
61
いつの間にか、祖母の死が流されていることに呆気に取られつつも日常に戻るためには「死」を忘れることを隠喩として表現しているのかなと思いました。才気って他人からの人気を得るのには大切だけどその質が高いかどうかは蓋を開けてみないと分からない。それにしても上滑りで実のない社交界が言語的に描写されるのに対し、男性同士の体温や肌触りなどの肉体的な描写が生々しいのは作者が同性愛者故か・・・。2015/03/03
ケイトKATE
54
ゲルマント公爵夫人のサロンに招待された「私」。「私」による上流社交界の観察が長々と語られるが、読んで正直しんどいものがあった。はっきり言って、サロンで語られる話題はほとんど空虚でつまらないものである。「私」が憧れてやまないゲルマント公爵夫人には、時々気の利いた話が出て来るとはいえ言葉遊びでしかない。プルーストは、上流社会に憧れたくさんサロンへ行っていたようだが、本当に愛着があったのだろうか?終盤、病で衰えたスワンが登場する。サロンの寵児であったスワン諦観した言葉には人生の切なさを感じ取ってしまう。2023/01/20