内容説明
ひとかけらのマドレーヌを口にしたとたん全身につたわる歓びの戦慄―記憶の水中花が開き浮かびあがる、サンザシの香り、鐘の音、コンブレーでの幼い日々。重層する世界の奥へいざなう、精確清新な訳文。プルーストが目にした当時の図版を多数収録。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
214
★『失われた時を求めて』岩波文庫版全14巻完読プロジェクト、 https://bookmeter.com/users/512174/bookcases/11525156 遂に始動しました。まずは、第1巻『スワン家のほうへI』です。読メ登録以前に途中挫折した集英社文庫版と比べると訳が読み易く、図版も多く掲載されており、イメージがし易いため、上々の滑り出しです。続いて第2巻『スワン家のほうへⅡ』へ。連続して読むと消耗するので、各巻の合間に他の新作を入れていきたいと思います。トータルの感想は、全14巻完読後に。2020/01/30
lily
149
ああ、これぞ文学のダイヤモンド。この世の美しきものすべてを丁寧に真心込めて研磨した結晶。その分子構造は芸術、愛、自然、読書愛、愛読書、感受性...。今迄の読書体験はこの一生分の美の探求の為のものだったのかもしれない。2019/08/11
ケイ
137
眠れない夜、すぐに目が覚めてしまう時に思い出すこと、それは幼い頃、コンブレーで一人先に寝に上がり母がおやすみのキスをしてくれるのを待ち焦がれた夜の記憶。敢えて思い出そうとしたのではなく、また覚えておこうとしておいた事でもなく、かつて日常であった悲しみや喜びをふと思い出させるようなきっかけ。それが紅茶にひたしたマドレーヌに具現される。一度思い出すと、記憶は連鎖となって現れてくる。何かを語ろうとするのではない。浮かび上がった記憶の一端からたぐり寄せられる懐かしき出来事たちの探求だ。2015/10/03
のっち♬
113
「われわれの社会的人格なるものは、他人の思考の産物なのである」—紅茶に浸したマドレーヌの風味により生まれる無意志的記憶現象をきっかけに、主人公の「私」が少年時代の体験や見聞を回想する形で綴られる。時間や記憶、芸術への多彩な考察や、社交生活を通した人間観察など、常識に囚われずに人間の本質に迫る文面には著者の敏感な感性が現れている。五感の機微やそこからの世界の拡がり、「波瀾万丈」な精神活動などを、大胆な比喩を駆使して表現する筆力も圧巻。随所に皮肉とユーモアを漂わせつつ、丹念に紡ぎ出される息の長い文章が独特。2020/09/18
やいっち
85
絵画好きのプルーストのこと、「失われた時を求めて」の中には数多くの絵が言及され、あるいは叙述のベースに横たわり、時には叙述の契機となったりしている。 参考にされているとしても、必ずしもプルーストが好きだと決まっているわけじゃなく、小説の筋の中で叙述の必要上、載っていたり、ほのめかされたりしてる、ということに留意すべきだろう。
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