内容説明
一九四〇年六月十四日、ドイツ軍パリ入城。パリ陥落の報を、亡命先で、脱出の途上で、駐屯地で受け止める人々。停戦か戦闘か?情報は混乱し、兵士も民間人も“魂の中の死”に襲われた夜、マチウたち部隊は、夜陰に紛れて逃亡する将校たちを目撃する…。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
壱萬参仟縁
8
ここまで読むと、結局、他人(国)から殺されない自由が戦争では強制的に殺されてしまうことの不条理を思わざるを得ない。生きる自由の剥奪だから。戦時下なら、「生きるより殺されることのほうがやさしい」(122ページ)の叙述も理解できる。マチウは≪おれは生きるのが好きだった≫、≪おれに仲間を見捨てる権利があったのだろうか。意味もなく死ぬ権利があるのだろうか≫(412ページ)と反省している。権利がないならば、自由ではない戦争はすべきでなかった筈。法律といえない法律で戦時下は何でもありの中、生への渇望は痛いほどわかる。2013/02/04
ラウリスタ~
7
待ちに待った第三部「魂の中の死」。もう感動。なにが感動かって?サルトルの文章はそれ自体で芸術ですよ。哲学的なことは分からないけど、純粋に文学として超一級。ヴィアンの「日々の泡」でパルトル(サルトルのもじり)の全作品(文字通りすべての版)を集める人がいるけど気持ち分かる。理由は説明しづらいけど、文字のひとつひとつが最高すぎる。サルトルの書いた一文一文が素晴らしすぎる。特に5巻はいいよ、ダイナミックだし。もういっそのことサルトルを専門にしようか。サルトル最高!!! だまされたと思って読んでください。2010/10/31
泉を乱す
5
オデット心情を書けるサルトルはすごい サルトルがモテるわけだ 一方でラストは本連作で初めて大袈裟な表現だなという印象 2019/07/31
へんかんへん
5
完全なる処理落ち2017/12/12
テツ
4
サルトルの描く戦時下という極限状態での自由。サルトルによる人間は自由であるべく呪われているという言葉の意味。マチウの「俺に仲間を見捨てる権利があったのだろうか。意味もなく死ぬ権利があるのだろうか」という反省。そして駄目人間だったマチウが武器を取り戦う姿に、ドイツ軍からパリを守る為に戦う姿に、極限状態で初めて自分で選択した自由というものの姿に、サルトルの思想が見えてくる気がする。哲学云々から離れ、単純に文学作品として見ても勿論一級品。自由について悩める若人には是非読んで欲しい。2015/12/18