岩波文庫
サラジーヌ 他三篇

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  • サイズ 文庫判/ページ数 252p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784003750827
  • NDC分類 953
  • Cコード C0197

出版社内容情報

「お気をつけて,生死にかかわることですからね」――若き彫刻家サラジーヌがローマで出会った奇蹟の歌姫.完璧な美に隠された呪うべき秘密とは? 狂おしい恋慕の果てに知った真の姿とは? バルトの名講義『S/Z』を導いた表題作ほか,音楽家,画家,女性作家――芸術家にまつわる四つの物語.一途で奇怪な情熱が渦巻く.

内容説明

若き彫刻家サラジーヌがローマで会った奇蹟の歌姫。完璧な美の裏の呪うべき秘密とは?狂おしい恋慕の果てに知った真の姿とは?バルトの名講義『S/Z』を導いた表題作ほか、音楽家、画家、女性作家―芸術家にまつわる四つの物語。一途で奇怪な情熱が渦巻く。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ヴェネツィア

368
表題作の「サラジーヌ」はバルザックの『人間喜劇』の中では「風俗研究」に属するようだが、そこでいう風俗はけっして表層的なものではないだろう。本篇は美の本質に深くかかわるからである。ラ・ザンビネッラの全てにおいて完全とまで言えそうな女性としての形態美は、実態においては男性であり造り上げられたものであった。サラジーヌは、いわば幻影にこそ完全を見ていたのである。ラ・ザンビネッラの美しさは、アドニスの美との近接性と同時にそれとは正反対の性質をも持っていた。しかも、その美は極めて脆弱であり、儚くも崩落してゆく。2021/09/02

のっち♬

113
『人間喜劇』の「パリの生活情景」から四篇を収録。いずれの作品にも芸術家が登場するのが特徴であり、美への倒錯と幻滅が随所で描かれる。『サラジーヌ』や『ファチーノ・カーネ』は幻想奇譚としての趣きが強く、神秘思想家としての著者の顔が垣間見れる。『ピエール・グラスー』にはサロンにおける絵画の大衆化への冷笑がよく現れている。『ボエームの王』といい時代の変化に対する彼の着目は実に鋭い、こちらは意匠を凝らした入れ後式の物語構造が逆説的なテーマ性と見事に結実した傑作。「美しいものは移ろいやすい……しかし醜いものは残る!」2021/08/10

新地学@児童書病発動中

94
バルザックの人間喜劇に属する4つの短編。表題作のような作品を読むと、この作家が短編にも長じていたことがよく分かる。主人公の滑稽な思い込みの真相が明らかになる結末は、可笑しくも哀しい。最後の「ボエームの王」が一番好みだった。物語の中に物語があり、語りが広がっていく展開が斬新でスリリングだった。メタフィクションというような小難しいことを考えていたわけではないだろう。当時のパリの複雑怪奇な社会を描くために、このような方法を取ったのだと思う。バルザックは語りの情熱が尽きることのない天性の作家だった。2018/04/06

NAO

59
「サラジーヌ」あまりにも田舎者で世間知らずだったためにオペラのプリマドンナがカストラートだということを知らず恋焦がれたサラジーヌの悲劇。そして、彼が恋い焦がれたプリマドンナの老後。時代の悲哀とはいえ、自分たちが作りだしたカストラータのなれの果てを忌み嫌う人間の身勝手さ。新興ブルジョアの家の謎の老人から過去にイタリアに飛び、また現在に戻ってブルジョアの金の出どころが明かされるという三段階構成のおもしろさ。2017/01/30

ラウリスタ~

22
バルザックってこんなに面白かったっけ?ってびっくりします。特に『サラジーヌ』『ファチーノ・カーネ』が最高。『ピエール・グラスー』はなぜか落ちだけ知ってた、有名な短篇だからだろうか。『ボエームの王』はストーリーが入り組んでて、途中でわけが分からんようになった。短篇なのに複雑に書きすぎ。要するに前の2編は最高の作品。バルトが『サラジーヌ』について書いているように、なんか哲学的なきっかけを持つ作品。そのひっかかりがあるから、いろんな分野から引用されたり、今でも批評されうるんだろう。2012/11/03

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