岩波文庫
ゴプセック・毬打つ猫の店

  • ただいまウェブストアではご注文を受け付けておりません。
  • サイズ 文庫判/ページ数 282p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784003750810
  • NDC分類 953
  • Cコード C0197

内容説明

巨万の富を握り、社会を裏で牛耳る高利貸、その目に映った貴族社会の頽廃。天使のような美貌で、天才画家に見初められた商人の娘の苦悩。私生活に隠された秘密、金銭がつなぐ物語の構造。斬新な視点が作家バルザックの地位を築いた『私生活情景』の二作。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

のっち♬

126
『私生活情景』より二篇。『ゴプセック』は、著者の公証人・代訴人事務所での見習い経験が財産をめぐるスリリングな攻防に昇華された傑作。入れ子式に階層化された語りが金銭の動きで繋がっていく様にも話術の妙が光っている。『毬打つ猫の店』は、建物や人物像の"化石"感を強調した仔細な描写による導入が物語の潜在的な原動力に結びついており、特に母親相手の突き抜けたような会話のズレは絶望感を通り越して諧謔味すら覚える。どちらも「強欲の行き着く先」を象徴した部屋の内観が終盤に配されており、不快な臭気と虚無感が充満して悍ましい。2022/01/10

syaori

70
「人間喜劇」の「私生活情景」に分類される二作を収録。『ゴプセック』では貧乏人の籠から金持ちの宝石まで何もかも呑み込もうとする強欲で、同時にパリで「最も誠実な」高利貸の生き様と、虚栄や快楽から財産を乱費する妻とその夫の互いに子を思うゆえの凄まじい争いを、『毬打つ猫の店』では結婚の夢と現実、「それが何になるのか?」と思いもせずに蟻のように働き続ける小市民の生活を描くことで、卑小で偉大、愚かで愛すべき人間の営みを捉える様は、さすがバルザック。人物再登場と資本の流れから人間喜劇の構造を捉える解説も合わせてぜひ。2023/04/24

NAO

53
「ゴプセック」高利貸しというと、極悪非道、冷血というイメージが強いが、ゴプセックはそういった面も持つ一方で、哲学的な面をも持ち合わせている。そんなゴプセックに比べると、レストー伯爵夫人や彼の恋人のマキシムはなんと薄っぺらなことか。レストー伯爵の嘆きと愁いはあまりにも痛ましく、だが、夫にここまでされながらも少しも反省していない夫人には呆れるだけでなく腹立たしさまで感じる。父ゴリオには非情で夫には不誠実、まったくいいところのないこのレストー夫人の姿は、社交界の一つの典型だったのだろう。 2016/09/20

マリカ

25
ゴリオ爺さん→ゴプセックと立て続けに読んだことで、「人間喜劇」の世界の次元が3Dから4Dになった。ゴリオ爺さんに引き続き、ゴプセックもまた金銭がらみの話かぁ、と思っていたら、解説によると、これもバルザックの仕掛けの1つ。金は天下の回りものというけれど、「人間喜劇」においても、人物再登場とともに、作品から作品へと金銭が流れる。それによって、よりリアルに現実世界を表現する。バルザックすごい!2012/04/22

藤月はな(灯れ松明の火)

21
高利貸しであり、退廃的な貴族を見つめて没落しても自分の仕事の領分を忘れないゴプセックが自分の金銭欲に貪欲でありながらも素敵でした。ロマンチックな考えしかできない若造弁護士に辛口の見方とアドバイスを与え、仕事はきっちり行う所が勤勉性を重要視する日本人的には良かったのでしょう。夫人の責任は自分も負っているのに子供の両親への愛も利用することの狡さにこの子の父親同様、許せません。「毬打つ猫の店」は天才だけど精神は餓鬼以下の画家と結婚してしまった娘の話。眺めている分はいいけど一緒にいると合わないという結婚は今も多い2012/10/11

外部のウェブサイトに移動します

よろしければ下記URLをクリックしてください。

https://bookmeter.com/books/474343
  • ご注意事項

最近チェックした商品