出版社内容情報
一九四七年八月一五日、インド独立の日の真夜中に、不思議な能力とともに生まれた子供たち。なかでも〇時ちょうどに生まれたサリームの運命は、革命、戦争、そして古い物語と魔法が絡みあう祖国の歴史と分かちがたく結びつき──。刊行当時「『百年の孤独』以来の衝撃」とも言われた、二〇世紀小説を代表する一作。
内容説明
1947年8月15日、インド独立の日の真夜中に、不思議な能力とともに生まれた子供たち。なかでも0時ちょうどに生まれたサリームの運命は、革命、戦争、そして古い物語と魔法が絡みあう祖国の歴史と分かちがたく結びつき―。刊行当時「『百年の孤独』以来の衝撃」とも言われた、20世紀小説を代表する一作。1993年“ブッカー賞の中のブッカー賞”を、2008年“ベスト・オブ・ブッカー賞”を受賞。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
藤月はな(灯れ松明の火)
87
シラノ・ベルジュラック、もしくはガネーシャめいた鼻を持ち、人々の秘めたる心の声を聞ける能力を持つサーシャ。若くして死に至ろうとしている彼が語るは、一族の歴史だ。祖父と祖母のロマンチックな奸計から互いの無理解と意固地さから、家庭内が冷戦状態になる部分が苦い。そして妻、パドマの名前への嫌味などを読むと、サーシャはどうしても好きになれない。一方、自己陶酔と被害者意識が強く、回り道しがちな語りに対し、ツッコミを入れて軌道修正するパドマとの遣り取り、傲慢な猫虐待者、エヴィへのブラス・モンキーからの調教に笑いました。2020/09/09
NAO
84
インドが独立した日の真夜中に生まれたサリーム・シナイ。自分について語るといいながらも、話は祖父の代から始まり、サリームが生まれるのは1巻の最後。しかも、彼は病院で取り換えられ、シナイ家の本当の子供ではないという。インド独立の日の真夜中に生まれた、特別な能力を持った子供たち。彼らと祖国インドとは、この先どのようにつながっていくのか。2020/10/18
syaori
75
インド独立の瞬間に生まれたサリーム。ドイツで医学を修めた祖父から始まる歴史を受継ぐ彼の半生を辿る形で、変容する近代インドの姿が描かれます。その物語は、『ラーマーヤナ』等を生んだ文化を体現するような雑多で豊満なエネルギーとイメージに満ちていて、彼とそのライバル・シヴァを筆頭とする581人の「真夜中の子供たち」の多様さも、多様な言語、民族、宗教、カーストが入り混じるインドを象徴するよう。「事物の不変の二面性」「善悪の二重性」を表すように対立するサリームとシヴァの出生の秘密の一端がサリームの前に飛び出て下巻へ。2022/07/12
ころこ
47
主人公サリーム・シナイが生まれるまでが長い。彼の秘密が明らかになるまでに上巻の3分の2位が過ぎているので、ここまで耐えられない読者は軒並み挫折するのではないでしょうか。ここまでがあるということは、彼だけが主人公ではないということでしょう。「まもなく9歳になろうとしている頃、私は早くも次のことを知った。すなわち、みんなが私を待っているということを。…でっかいことをやるんだぞ!何もかもお前のために用意されているんだ。」家族の物語が国家の独立とその歩みを表象している。しかも、中東のオリエンタリズムと我々(極東)2022/01/16
きゃれら
22
はあはあ、ぜいぜい。やっと読み終えた。なんという読みにくさ。読メ内イベントで「読みます」と言っていなかったら 、読み終えられたとは思えない。では面白くなかったか?いや、やっぱり面白いと思う。語り手の生まれる前のファミリーストーリーから説き起こし、10歳の誕生日の直後までの物語だが、超絶な脱線と饒舌が物語を渋滞させるし、語り手のそばにいたりなかったりする聞き手の存在が作品の構造を複雑にしていて、頭を混乱させる。さらにインドの話という背景に作者が仕掛ける超自然な幻惑話が・・・。果たして今年中に読み終えられる?2022/12/16