出版社内容情報
「カミロ、お前は見なかったのか?――おれの妻は浮気女だと」。王妃の密通という〈物語〉にふと心とらわれたシチリア王は、猛烈な嫉妬を抱き……。人は心の〈冬〉をいかに生き延びるのか。円熟した筆が物語を自在に操り、悲喜劇交錯するドラマを描く、シェイクスピア晩年の傑作。 清新な翻訳が原文の豊かなリズムを伝える。
内容説明
「カミロ、おまえは見なかったのか?―おれの妻は浮気女だと」。王妃の密通という“物語”にふと心とらわれたシチリア王は、猛烈な嫉妬を抱き…。人は心の“冬”をいかに生き延びるのか。円熟した筆が物語を自在に操り、悲喜劇交錯するドラマを描く、シェイクスピア晩年の傑作。清新な翻訳が原文の豊かなリズムを伝える。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
春ドーナツ
15
西洋の書物に日々親しんでいる。すると、その中で言及されるテクストで頭抜けているのは聖書。次がシェイクスピアじゃないかと個人的に思うようになった。原典にあたっておいた方が読書が豊かになると考え、昔、文春新書で新約の半分を、数年前、沙翁の戯曲を10編まとめて挑戦した。なんか、前置きで終わりそうだけれど、最近岩波文庫の新刊を読むことを習慣にしていて、本当に前置きのみで突き進みそうなので、以下、というか、復元されたグローブ座の写真が掲載されていて、屋外劇場なんですよね、ええと、訳者あとがきが良かった。あとは、ええ2023/05/18
泉を乱す
9
ずっと読みたかった冬物語。エリックロメールの同タイトル映画に劇中劇で出てきてキーとなる。英語でシェイクスピアは読めないので和書を探してたら昨年岩波から出てた、嬉しい2025/01/07
まどの一哉
4
嫉妬という主題はかなり多くの文芸作品で目にする気がするが、このシチリア王の嫉妬はかなり極端な設定だ。だんだん疑いの目が育っていくという経緯を経ず、物語が始まるやいなや妻の浮気を決めつける急な展開。妻が亡くなり赤ん坊が捨てられた後に、アポロの神託により妻の無実が証明される。すると王は手のひらを返したように涙ながらに反省するのである。2025/04/15
amanon
4
タイトルから何となし淡々とした内容を想像していたのだが、前半はシチリア王の嫉妬心から発した妄想を巡るかなりドロドロとした展開でちとびっくり。人間、マイナスの方向に思考が進むと際限がないのだな…という気にさせられる。それに比べると、後半はかなりご都合主義というか、お気楽なストーリーで、前半との対比が妙。ただ、解説にもあるように、韻文と散文が混在しているというかなり特異なスタイルで、舞台では韻文はメロディーをつけて歌われていたとのことで、一度舞台を見てみたいという気にさせられる。まさかのラストシーンも妙。2023/10/24
スローリーダー
2
シェイクスピアが観客を大いに意識して作り上げたと想定してこの舞台劇を読むと、またひとつ面白さが加わる。いちいちその場の観客の反応を聴きながら演劇を進める当時の劇場の様子を頭に思い描いた。あたかもTDLやピューロランドの舞台に観客が惹き込まれる様子を。前半はお得意の疑心暗鬼が膨張する耐え難い悲劇、中盤は俗物が滑稽な中休み、そして終盤は誰もが幸福感に浸れる驚きのハッピーエンド。ポーライナの才知に感服し、ハーマイオニの神々しさに感動し、そして為政者レオンティーズの拙劣さに嘆息した。只、演劇の台詞は読みにくい。2023/04/30