内容説明
作者の後半期、六十代から七十代の短篇集に収められた作品を収録。巧みな語り口にますます磨きがかかり、人間観察にさらに深みが加わる。我々の周囲にもいそうな様々な人物が登場するが、作者の辛辣な描写の奥に意外なほど優しい眼差しが窺える十二篇。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
103
下巻では12の短篇が収められていて上巻よりも面白いというか人間の心の深層などをうまく小説に仕立て上げてくれています。やはり短篇小説の方がわかりやすい気がします。解説にも書かれていますが最初の「物知り博士」はモーパッサンの短篇を思い起こしました。「蟻とキリギリス」は確かに逆説的な面白さがあります。短編集は50編ほどが収められた英語の原文の本も所有しているのですが「サミングアップ」や「作家の手帖」よりも読みやすそうなのでそちらも読んでみようかという気になりました。2025/09/22
kana
57
おもしろくておもしろくて、モームの短篇がこんなにも素晴らしいことを知る人があまりにも少ないということが残念でならない、という思いを、幾たびもかみしめながら読んだ1冊。著者の作品が巧いのは、軽妙洒脱な筆致で、短篇にも関わらず登場人物の長所や短所を含む人間性を大変細かく描写し、あぁいるよねーこういう人、と読者がうんざりしてきたところで、その下地を存分に生かしつつ、ふわっと話を飛躍させて、皮肉のきいた味わい深い結末にもっていくところ。その鮮やかさといったらもう!神業です。行方さんの安定感のある翻訳もお見事。2013/09/25
アナーキー靴下
50
この短篇選を読んだきっかけはお気に入りの方のランキングを見て。「月と六ペンス」も良かったが短篇選も本当に良かった。下巻は12篇も収録され、作品ごとにはとても感想を書ききれない、でも書きたくなるような満足感たっぷりの一冊。出だしから強烈な「物知り博士」のような面白い作品から、心に沁みる「サナトリウム」まで多彩。実体験とは程遠い、つまり身近なあるあるネタではまったくないのに、巧みな描写に引き込まれ、共感し強く感情を動かされてしまう。モームをWikipediaで調べたら「最良の意味での通俗作家」と。納得。2021/01/12
ももたろう
41
すっかりモームの大ファンになってしまった。扱うテーマは人間性の奥底を突いた深めの内容が多いにも関わらず、それをユーモアたっぷりで、皮肉っぽく、軽快に、面白おかしく描いてしまう。それがモームという作家。どの作品を読んでもハズレがない。人並外れた観察眼と鋭い心理描写に加え、起承転結のはっきりした物語を描く彼の巧みな技巧が加わると誰も止められない。無類の面白さ。この短編集の中で特に好きなのは『サナトリウム』『ロータス・イーター』『マウントドレイゴ卿』『ジゴロとジゴレット』。でも、全部面白い。出会えて良かった。2016/12/14
アキ・ラメーテ@家捨亭半為飯
40
上巻に続いて、下巻も読んでみる。『物知り博士』『詩人』『サナトリウム』の3作品が良かった。『物知り博士』知ったかぶりの嫌な奴だった物知り博士の思いやりある繊細な一面や、『詩人』ちょっとした間違いをここまでの短編に!オチがいい。『サナトリウム』死と愛の物語。今まで読んできたモームの短編の中ではあたたかな作品だと思う。2016/01/23