出版社内容情報
准男爵夫人の懊悩、深夜の殺人事件捜査、ジャーンダイス裁判の意外な行方──二つの視点で交互に語られた物語は、ついに大団円を迎える。ユーモアと批判たっぷりに、英国社会全体を描くディケンズ芸術の頂点。(全四冊完結)
内容説明
「荒涼館からどんどんひとがいなくなるね」―エイダとリチャードが去った屋敷を守るエスター。彼女を殺人事件捜査のため深夜連れ回すバケット警部。ジャーンダイス裁判も終末が近づき、二つの視点で交互に語られた物語は大団円を迎える。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
やいっち
72
2000頁の大作を楽しんだ。18世紀風な語りと、ブロンテ姉妹にあと一歩に迫る緊密な心理描写、情景描写とが混在している。ごくたまに出合う現代文学を彷彿させる描写にゾクッと。刑事モノ探偵モノのハシリのようなサスペンス的要素の一方、ハラハラのドラマの果てに呆気ない結末への流れ。主人公やその仲間たちがいい人過ぎてつまらなく感じる一方、個性的な灰汁の強い登場人物群の言動が読み手を飽きさせない。ギャグにも近い諧謔的でユーモラスな人物表現は、ゴーゴリやチェーホフ、ツルゲーネフらに影響していそう。2020/03/04
momogaga
48
やっと読了しました。1年間、NHK大河ドラマを見終わった感と似ていますね。この4巻目で怒涛の伏線回収は、お見事でした。これからも長編に挑戦していきます。 2023/07/15
道楽モン
35
エンタメ小説として圧倒的な面白さ。ディケンズの最高傑作との評価も異議なし。結末に至って分かることは、膨大な登場人物の全員が必然的な存在であり、有機的な関係性を持っているという構成力の卓抜さ。毎月3~4章分を発行する出版形式なので、書き出す時点ですべてが準備、構想されていたということに驚く。およそ170年前のイギリス社会を通じて、人間の持つ愚かさも慈愛も普遍的なものであることが分かる。ノブレス・オブリージュを体現するジャーンダイスは偉大だが、現実にレアな存在だから小説になるんだよなー。死ぬ前に読むべき傑作。2024/04/24
みつ
33
一瀉千里のペースで読了。もう少しこの世界に浸りたいとも思いつつ、どうしても次の頁を繰る手がやまない。タルキングホーンの事件はバケット警部により意外な犯人に達するが、推理小説的興趣は少ない。裁判は急転直下の結末。いかに当事者を消耗させるものであったかを痛感。エスターの物語も、時間の経過がかなりあった模様(「荒涼館の女主人の期間が7年」という趣旨の記述も。p449)で、その最後近くで当初予測していた人物と(唐突にというか、案の定というか)結ばれる。終わりそうもなかった物語も幸福な気分で本を閉じることができた。2023/12/24
Ryuko
29
裁判に魅せられ、振り回された人たちが哀れ。裁判制度に対する風刺なのだろうが、弁護士たちだけが得をする本当にばかばかしい制度である。一方、ヒロインであるエスターは、幸せになってお話は終わる。大団円であるといえるが、よかったよかったという気分にはなれない。エスターの受け身っぷりに好感が持てない。→2020/01/30