出版社内容情報
下巻では20世紀後半の多様な批評を解説する。ポスト構造主義、精神分析批評に加えて、ポストコロニアル批評、新歴史主義、カルチュラル・スタディーズ、フェミニズム批評など1990年代以降に展開した文学、言論をめぐる動向を手際よく整理する。理論への入門のみならず理論からの脱却をも視野に入れた画期的な書。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケイ
132
下巻まで読んでよかった。次々と語られる文学批評の理論とそれへの批判。後半でフロイトやフェミニズムが出てくるあたりでようやく腑に落ちてくる。文学批評は歴史の流れと密接に関係しているから、その流れから自由ではいられないということだろう。最終章で 「ある特定の方法で議論したり書いたりできる資格を得るために卒業証書をもらうのであって、個人的に何を考えようと信じようと卒業資格とは関係はない」と書いているのを読んだ時には感激した。寛大で自由な知のエネルギーが全体に迸っているなと。より良い理解のためには再読必須。2020/08/06
ケイ
119
私の理解が正しいとしての結論。物語の内容をカッコに入れてしまう「構造主義」から「ポスト構造主義」へ。ここで行われる脱構築から発展するセクシズム、sexism、男女差別、フェミニズム。二元化は男女間だけでなく、階層間でも行う事で、支配層と非支配層→政治理論にも関わってくる。ただ、文学者、批評家としてではなく、純粋に読者として文学を読みたいすれば、ロラン・バルトの言うことをもう少し興味をもって読みたいと思う。5年前から積んでる、ローラン・ピネの書いたバルトについてのFICTIONはそろそろ読みどきかな。2020/09/23
harass
43
読み進めるのに何度か中断したが内容が濃いためで、何度か読みなおしていた。 文学理論の一般向け解説書本だ。原書は1983年に書かれて、12年後に新版としてあとがきが追加された古い本なのだが、この本の意義は褪せることはない。わかりやすく書いているはずだが、解説される思想自体が難解なことと、シニックな言い回しなどは刺激的挑発的だがその分遠回しに感じるところがある。だが非常に重要な問題提起をしているのは分かるし、説明の比喩などのレトリック感心する部分が多い。語り口自体に面白さがある。文庫化を素直に賞賛したい。2015/03/21
zirou1984
38
下巻ではポスト構造主義、精神分析について解説した上で終章では政治的批評という側面からイデオロギーについて語られるのだが、後期産業資本主義の支配的イデオロギーに対する文学理論の無力さといいう指摘は正に現代思想の行き詰まりと照応している。文学理論ついて触れながら最終的にそれを埋葬しようとする結論には驚きであり、新版あとがきで触れられる90年代以降の理論についてもその脱政治的であるが故に支配的イデオロギーから抜け出せないジレンマを抱えたままである。イデオロギー論には多少疑問を感じつつも興味深い内容であった。2014/12/30
ころこ
29
「文学的な「オリジナリティ」なるものは存在しない。「最初の」文学作品なるものは存在しない。あらゆる文学は、「間テクスト的」なのだ。」ポスト構造主義を読むと、文学を読むことの前提に人文的の意味や価値の共通理解が必要だということの最後に何があるのかと考えさせられます。次の精神分析批評では、いないないばあを引いて「いない・いたは、私たちが想像しうる恐らくもっとも短い物語なのだ。はじめに、ある対象が失われ、次にそれが再発見される。しかもそればかりではない。たとえどんなに複雑な物語であっても、このモデルの変奏として2018/12/27
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