内容説明
二〇世紀初頭のイギリスにガードナー、ルーカス、リンド、ミルンの四人を代表とするエッセイ文学が一斉に開花した。イギリス流のユーモアと皮肉を最大の特色として、身近な話題や世間を賑わせている事件を取り上げ、人間性の面白さを論じてゆく。
目次
1 ガードナー(配送されなかった手紙;男と時計 ほか)
2 ルーカス(N一字の差―上流社会での悲劇;ロンドン名物 ほか)
3 リンド(時間厳守は悪風だ;無関心 ほか)
4 ミルン(日記の習慣;迷信 ほか)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
hit4papa
45
20世紀初頭の英国エッセイ アンソロジーです。名手と謳われた書き手四人とのことですが、知っているのは「くまのプーさん」のミルンだけ。内容をざっくり言うと、切符どこに入れたっけ?的な、現代にも通じるあるある話しです。日常の些細な出来事を取り上げ、オチにやんわりとした教訓めいた事を述べています。これが英国流のウィットとかユーモアというものでしょうか。各々に目の付け所に特徴があり、当時の英国の風物、習慣が垣間見えるので、かの国のファンならオススメです。なかでは、ミルンの妄想っぽい広がりがあるコラムが好みです。2018/12/08
藤月はな(灯れ松明の火)
45
ちょっと胡散臭い題名(笑)に惹かれて読了。英国特有の胡椒、生姜、山椒のような皮肉とユーモアと自虐が利いたようなコラム集。『くまのプーさん』で御馴染みのA・A・ミルンも寄稿していたのが驚きましたが彼のコラムを読むと名作ミステリー『赤い屋敷の秘密』を書いたミステリ小説家らしい一面も見れて興味深かったです。特にリンドのコラムは最後の一文でじわじわと来るものがあり、笑いを堪えるのに必死でした。2013/11/05
みつ
44
英国の4人のコラムニストの作品を収める。標題の『たいした問題じゃないが』がこの本の特質を端的に物語る。身辺のささやかな事柄(と自らの失敗談)を扱ったコラムは、さほどの卓見があるわけでもないが、語り口のうまさで読ませてしまう。意見を述べる場合でも声高に主張するのではなく、「こんな考えもあるよね」といった風情で異論にも寛容そう。これがいわゆるイギリス風のユーモアなのか。手紙をポケットに入れたまま投函し忘れるコラムが2つあった(p9、17)のには笑った。丸谷才一のいわゆる雑文も、ここから影響を受けているのかも。2023/12/09
lily
43
たいした問題じゃないが、心理学者が好みそうな癖や習慣など、ユーモアがあるインテリ紳士の公開して全く痛くないが、可愛気のある妙な題材をチョイスしたのがイギリス人らしい。時間厳守を身勝手とすることや記憶は詩人の素材であるという変化球は好んで受ける。『英文標準問題精講』にはこの4人からの出題が非常に多いらしいが、なるほど、文章が面白くて我慢出来ず解かずに一冊丸々和訳だけを最後まで一気読みした狡い記憶が蘇ってしまった。2019/06/28
えーた
30
第一次世界大戦前後に活躍した、ガードナー、ルーカス、リンド、ミルンという4人のイギリス人文筆家の傑作コラムを収録したもの。皮肉のきいた堅苦しい社会批評かと思いきや、ユーモアあふれる気のきいた楽しいエッセイ集で、昼の休憩時間や、お風呂上がりにくつろぎながら読んだが、肩肘張らず楽しめる内容で、ジョーク好きな僕には大変楽しい時間だった。長年、英文翻訳のテキストに使われていた文章だけあって、心を打つ教訓的な内容もあり、小中学校の課題図書にしてもよさそうな感じ。最後のミルンは『クマのプーさん』の作者だったのですね。2017/07/01