出版社内容情報
魯迅をモデルとする〈周さん〉の、仙台の医学専門学校に留学していた時代の葛藤を描いた「惜別」。結核療養所で闘病する若者〈ひばり〉の書簡を通じて綴られる、みずみずしい恋愛小説「パンドラの匣」。戦中・戦後の激動の時代に、作者が苦悩しながら世に問うた〈青春小説〉二篇を収める。(注=斎藤理生、解説=安藤宏)
【目次】
惜 別
パンドラの匣
注(斎藤理生)
解説(安藤 宏)
内容説明
魯迅をモデルとする〈周さん〉の、仙台の医学専門学校に留学していた時代の葛藤を描いた「惜別」。結核療養所で闘病する若者〈ひばり〉の書簡を通じて綴られる恋愛小説「パンドラの匣」。戦中・戦後の激動の時代にあって、作者が苦悩しながら世に問うた〈青春小説〉二篇を収める。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
優希
46
戦中・戦後の激動の時代の中で書き上げた2編の中編がおさめられています。医学留学時代の葛藤、病の中の恋愛というテーマはまさに青春小説というのに相応しいように思えました。苦悩の中で描いたようですが、それぞれが明るい余韻を残すのが印象的です。2025/08/19
Y.T.
1
『惜別』が面白かった。『阿Q正伝』で有名な魯迅の青春時代(仙台医学校時代)を描く。当初はナイーブに近代科学を信奉し、医学救国により同胞民衆を覚醒させることを目指していた周さん(のちの魯迅)だが、明治維新が「科学的思考」ではなく「国学的な忠義の伝統」によるものとの洞察から、徐々に精神的・文化的教化の重要性に力点を移動させる。結局同時代の革命運動や近代科学に対しても堕落を見出し絶望寸前に陥るが、それは周さんの中で科学や近代への純粋な畏怖が終焉し、「青春時代=人類の青年期としての近代」の陰りと理解されるだろう。2025/08/31