出版社内容情報
「写生は多くモルヒネを飲みて後やる者と思へ」。子規の絵は味わいある描きぶりの奥に気魄が宿る。子規にとって絵を描くことは病床の慰めや楽しみ以上の、生きるよすがであった。最晩年の三か月に描き、『果物帖』『草花帖』『玩具帖』と題してまとめられた画帖をオールカラーで収録。漱石、鼠骨ら、子規の絵をめぐる文章を併載する。
内容説明
子規の絵は味わいある描きぶりの奥に気魄が宿る。子規にとって絵を描くことは病床の慰めや楽しみ以上の、生きるよすがであった。最晩年の三か月に描き、『菓物帖』『草花帖』『玩具帖』と題してまとめられた画帖をフルカラーで収録。子規の画論も併載。
目次
第1部 子規のスケッチ帖(『菓物帖』;『草花帖』;『玩具帖』)
第2部 子規の絵画観(「明治二十九年の俳句界」より;画;『病牀六尺』より)
第3部 子規の絵をめぐって(寒川鼠骨「子規居士の絵―「菓物帖と草花帖」」;寒川鼠骨「解説と回顧」;下村為山「子規氏の絵」;夏目漱石「子規の画」)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
新田新一
27
前半には正岡子規の絵が収められて、後半には絵に関する子規のエッセイや子規の絵を論じた文章が収められています。この本に収録されている絵を描いた時に、正岡子規の健康状態は悪化していました。寝たままの状態でないと絵を描けないこともありました。痛みを抑えるためにモルヒネが使われたこともあります。そんな苦境にありながら、これほど澄み切って、繊細なタッチの絵を描けるとは驚きです。絵を描くことは本当に楽しいとエッセイで述べています。有名になるとか、お金を稼ぐといったことから離れた芸術の救いと恵みを感じました。2024/07/24
みつ
23
子規の死の直前、三月足らずの期間に描いた三十枚余りの絵をまとめた『菓子帖』『草花帖』『玩具帖』に、子規が絵画について触れた随筆、及び彼をよく知る三人が彼の画について綴った文を加える。水彩で描かれた果物、草花は、ちょうど今の時期(八月)辺りのもので、淡い色調が清涼な気分を伝え、モルヒネで痛みを抑えながらの写生が(別の随想に記録される様々な食とともに)僅かな喜びであったことがわかる。随筆では、『病牀六尺』所収の「渡辺のお嬢さん」が泊まりに来たエピソードが楽しい。漱石の哀惜の情を湛えた文も何度読んでもいい。 2024/08/07
koji
14
私は司馬さんが「坂の上の雲」で子規を明るく描いたことが作品の質を大いに高めたと思っています。さて、その子規は俳句、短歌ばかりでなく、その写生的な絵にも才能を発揮しています。若松英輔さんが日経新聞連載「言葉のちから」(2/3)で、子規の「写生」の精神とは「生、即ち「いのち」のありようをまざまざと写しとること」と言っていますが、最近刊行された本書は、そんな子規の精神がふんだんに感じられるスケッチ帖。バナナ、リンゴ、瓜、胡瓜、お多福、菊など。剽軽さ、瑞々しさ、生きる実感。漫然と眺めているだけでも幸福感に浸れます2024/06/20
真琴
7
「写生は総て枕に頭つけたままやる者と思へ 写生は多くモルヒネを飲みて後やる者と思へ」(P192)前半部分には、正岡子規が晩年取り組んだ写生が掲載される。味わい深く絵画集としても楽しめると思う。2024/06/06
ichigomonogatari
6
病床で子規が描いたスケッチ『果物帖』『草花帖』『玩具帖』と題してまとめられたものをカラーで収録したもの。第二部には子規の絵画観、第3部には子規の絵をめぐって書かれた文章が収められている。病状が悪化していた子規は、モルヒネを打った後に写生をするようにしていたとあり痛ましいが、絵を描くことはなによりの楽しみでもあった。漱石の文章「子規の画」が良かった。2024/09/29