出版社内容情報
高浜虚子(1874-1959)は、二冊の自伝を刊行した。青壮年時代の活動を主にしたものと、能楽、郷里、交遊歴を回想、晩年の心境を綴った一冊。二冊をまとめて、捉えにくい近代俳句の巨人・虚子の全体像にふれる。初めて虚子を知る者には虚子入門書・近代俳句への手引き、虚子愛好者には、改めてその素顔にふれる格好の一冊。
内容説明
正岡子規のあとを継いで近代俳句の礎を築いた高浜虚子(1874‐1959)は二冊の自伝を残した。青壮年期の軌跡を語った菁柿堂版。子規や漱石などとの交遊、能楽、故郷、晩年の心境などを綴った朝日新聞社版。その二つを一巻にまとめた。「写生文」で磨き上げた、語り掛けるような文章は、俳句の巨匠の素顔を伝える。
目次
西の下
松山
京都
仙台
文芸に遊ぶ
「ホトトギス」発行
子規の死
文章
鎌倉
十一年間
九年間
その後の十六年間
小諸(菁柿堂版)
宝文会員来襲
国民文学欄
丸ノ内ビルディング
祖先祭
椿の苗木
「高浜虚子」
無学〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
藤月はな(灯れ松明の火)
56
正岡子規の早世後、「ホトトギス」を継ぎ、近代俳句の基礎と未来の俳人を育て上げた高浜虚子。故に彼の交流関係は文豪、政治家、天文学者など、中々に幅広い。また、若き日は周囲に眉を潜められながらも俳句を練っては酒をかっくらうなど、無頼な若人時代を過ごす一方、老年期は謡曲を請われて謳い、海外などを外遊するなど、中々、アグレッシブ。また、戦後、記者から「戦争が俳句に影響したか」と問われた時、「否」と答えた虚子は俳句に対して愚直だった。同時に時世の影響で帰農した父を見た彼にすれば時局や虚栄に阿って自分の作品を曲げる事は2024/09/25
kawa
35
既刊の2冊(昭和23年、30年刊)の伝記を一つに合冊して2024年4月に新たに発刊。時系列的なものでなく折々に書かれたものをまとめて、虚子氏の生涯や業績、俳句の世界の流れが理解できる構成。古い時代の作品なのに読み易い文体で書かれていることがまず好印象。個人的には、晩年のそれよりも若い頃の子規、漱石、碧梧桐さらに戦後の秋櫻子各氏らとの関わりの部分が興味深い読みどころだった。漱石先生の「坊ちゃん」では、松山弁の会話部分がうまくなくて虚子氏が添削したそうな(図書館・新刊コーナーから)。2024/07/11
らみゅね
4
書店の平積みなどで見かけると思わず買ってしまう。 おーキヨシじゃないか! 明治7年生まれで子規や漱石らの世代で俳句の大先生である。瑞々しいいつもの感じと晩年の大御所然としたギャップも楽しめる。 帰宅したばかりの鷗外の様子など素描力たるや! ドナルド・キーンは死んだ友人のことは書きません、という姿勢だが虚子は対照的に子規は勿論のこと比叡山の人々や鷗外、漱石などエピソードをしっかり残している。 虚子は芭蕉から子規から漱石、そして鷗外ら明治から大正の日本文学、やがて漱石一門の芥川や百閒、寅彦らのハブなのだ。2024/08/03