出版社内容情報
森 ?外[モリ オウガイ]
著・文・その他
内容説明
哲学を職業とする金井湛君は、ある時ふと思った。「おれの性欲の歴史を書いて見ようか知らん」―。初出誌が発禁処分を受けた異色作。自伝的要素を背景に、6歳からの性にまつわる様々な記憶を淡々としたユーモアをもって語る。浅草の楊弓場や吉原の廓、当時の男子寮等の様子も興味深い。各頁に詳細な注を新たに付す。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
mayumi
17
森鷗外の自伝的小説。発禁処分になったことで有名な作品。主人公・金井湛はある時ふと思い立つ。「おれの性欲の歴史を書いてみようかしらん」。そして語られる彼の半生。読んでみると、直接的な表現もなく、何故これが発禁処分?と首を傾げたくなるけれど、当時としては「性欲の歴史」というあまりにもストレートすぎる物言いが問題視されたのかもしれない。解説が斎藤茂吉で豪華。彼によると、観潮楼の歌会で発禁処分が話題になった時、鷗外はにこにこしていたらしい。世間の反応も折り込み済みだったのかもしれない。2024/03/10
シロナガススイカ
14
「性欲的生活」と訳されるらしい。主人公、金井湛が性にまつわる思い出を綴る小説。彼は人より性欲が無いのでは?と思案しているようで、それはそうかもと思うくらい生々しさは無い。普通に鴎外の記録を読んでいるような感じがしたが、実際のところどうなのだろう?興味深かったのは、男色が自然と存在していること。少し調べただけだが、男色がタブー視されるようになったのは、西欧文化が入ってきて以降だとか。それが今度は許容されようとしているのだから、性の歴史も案外面白い。同じページに注釈があるのが地味にポイント高くてナイス改版。2022/12/25
KF
10
森鴎外の作品を読んだことが無かったと思います。主要作品だけでも何作品か読んでからの方が面白いのではないでしょうか。雑誌に掲載されて即時ではなく半月以上経過しての発禁。結構な部数が出回ったのでしょう。 本作品が初めて世に出たのは明治42年。今回読んだのは令和4年です。それもあって各頁には説明が大量。文字使い、外国語使いも多いせいもありますね。書籍となって出た際の斎藤茂吉の解説でさえ昭和10年。まだ国家が大日本帝国だった時代です。当然現在のような文字使いではなく、中華民國のような旧字体だったでしょう。2023/08/11
まつ
4
本棚にあったから読んでみた。 面白くないが面白かった。2025/01/11
素人
3
東京英語学校の寄宿舎時代の性暴力があまりに淡々と描写されているように感じ、奇異な印象を受けた。それに先立つ部分では、年長者から強姦されかけた主人公が父の言葉を聞き「これも嘗めなければならない辛酸の一つであったということを悟った」と述べている(45‐48頁)。後年の主人公は女性を結婚相手や性欲の捌け口として対象化し深い関係性を避けているように見えるが、その背景には上記のような少年時代の経験があったのではないかと思う。2024/07/06
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