内容説明
荷風の戦後は「問はずがたり」とともに始まる。一人の画家の眼を通して、戦中戦後の情景が映し出される。若い女性の心象を掬いとる「吾妻橋」「或夜」「心づくし」「裸体」。下町を舞台とした戯曲「渡鳥いつかへる」。戦渦を生き抜き、新たな生を受けとめる人々への哀感と愛惜のまなざし。戦後の荷風文学がよみがえる。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
106
表題作は二つとも読んだという気はしているのですがかなり若い頃だったのであまり好みではないということですっかり忘れていました。「問わずがたり」はどちらかというと中編で私のような年齢になると身近な気持ちにさせてくれます。あと10作ほど短編が収められています。その他に随筆のような作品も7作収められていて私は荷風の当時の考え方などがわかり楽しめました。2020/05/03
ehirano1
70
「吾妻橋」について。戦後が舞台で、その中で懸命に生きることがお涙頂戴、・・・なんてことはなくむしろ飄々と生きる姿が逆に力強さを感じました。功徳を得られたのも、結局は心の置き所故だったのではないかと思いました。2023/07/21
クプクプ
66
「問はずがたり」のみ中編小説で、残りは短編小説と随筆と戯曲の、ごちゃまぜの作品集。永井荷風の戦後の作品が収録されています。私は「吾妻橋」が好きでした。吾妻橋の下で、客の男性を待つ、若い娼婦の話でした。テーマはよろしくないですが、メリハリがきいた文章で、永井荷風らしい作品でした。一番、よかったのは「冬日の窓」という作品で、恐らく随筆でしょう。永井荷風が戦後、熱海に住み秋から冬になる頃で、熱海の山の紅葉が描かれ、戦災で書物を失った自分を、西行や芭蕉に例えモーパッサンまで引き合いに出し緊張した余韻が絶品でした。2026/06/03
ワッピー
23
戦禍の迫る東京で、亡妻の連れ子や女中と同居する売れない画家の密かな欲望「問わずがたり」の他、戦中戦後の世相を背景に男女の心の襞を描いた「噂はなし」「或夜」「羊羹」「心づくし」「にぎり飯」「買い出し」「裸体」「老人」「吾妻橋」の短編および自らも舞台に出た「渡り鳥いつかへる」脚本と随想7編を収録。戦中・戦後の世相や荷風の生活実感が伝わってくる作品群だが、ワッピー的には「にぎり飯」や随想「冬日の窓」の自然描写が印象深い。また自分の作品の再録に絡む版権トラブル「出版屋惣まくり」の嫌みもねちっこくて実に荷風らしい。2020/02/21
まぶぜたろう
18
「問はずがたり」が酷い。「濹東綺譚」やその他の作でもまー同じなんだが、鬼畜老人のナルシスティックな自分語り、倫理観に欠けた老害ファンタジー感が特に酷い。今どきのポリコレに抵触しているからではない。言葉が生っぽく昇華されてない、利己的でストレートな視線が気持ち悪い。解説では、荷風が戦後の女性たちの「再生」を「優しくすくい取」っていると言うが、老人が自分に都合の良いように女性を読み直しているとしか思えない。「にぎり飯」や「吾妻橋」など、いくつかの短編は流石に巧い、しかし時既に遅し、荷風はもういいや。がっかり。2026/05/13
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