出版社内容情報
同時代への批判,喪われた時代への挽歌の想いを込めた戦前,戦中の作品13篇を精選した(解説=多田蔵人).
内容説明
祭典と騒乱の記憶から奇妙な国の歴史を浮かびあがらせる「花火」、エロスの果てに超現実を垣間見せる「夏すがた」、江戸情調を文章に醇化した戦前の小説、随筆を精選した。「来訪者」は、戦中に執筆、終戦直後、発表の実験小説。贋作問題と凄愴の趣を込めた男女の交情に、「四谷怪談」や夢の世界が虚実相半ばして交響する問題作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
117
最近このような小説をじっくりと読むことが増えた気がします。さすがに年をとったということなのでしょう。ここには荷風の随筆あるいは小説といった範疇分類をするには不明な感じの作品があまた収められています。「花火」「来訪者」はどこかで織んだこともありますがやはり印象に残る作品です。2019/09/15
藤月はな(灯れ松明の火)
72
「花火」は、時代の転機を象徴する出来事に自身の没落を重ね合わせる様に時代への哀惜を感ず。「来訪者」は贋作事件と爛れた男女関係、四谷怪談の因果が絡み合う一種のリドルストーリー。そして語り手は贋作事件に携わった白井の知人という、又聞きの怪談のような立ち位置なのが、不穏さを一層、醸し出す。今までの商売柄や断りきれない性格による多情な女と見栄っ張りな男というプロットが共通する「夏すがた」、「あじさゐ」も印象的。しかし、前者は女性の性惰の肯定、後者は多情な女に尽くす男の虚しさと結末が見事に反転しているのが面白いのだ2019/08/08
クプクプ
70
永井荷風の短編集で一番、面白いのは、この一冊でしょう。時代背景はしっかりしていますが、バラエティーに富んでいて楽しいです。フランス語から、男女の恋愛の話まで幅広いですが、私の人生経験と現在でも通用する話という点で選んだのは「女中のはなし」です。永井荷風が、二十代前半の女中を雇い、女中も、しっかり働いているようですが、仕事の他に打ち込んでいることがあり、その話と、またもう一つの永井荷風への相談が、シンプルな物語の中でアクセントになっていました。一冊を通して、永井荷風の表現力に私が嫉妬した読書になりました。2026/02/28
HANA
63
自分の読書人生、某翻訳者に多大な影響を受けているので「来訪者」目的で読み始める。荷風は何となく触れる機会がなかったのであるが、読み始めてすぐにそれを後悔することとなった。こう何というか人生の傍観者的な視線とか、ディレッタントな所とか爛熟とか退廃を好んで描写する所が何となく自分の気風にあうのである。冒頭の「花火」からそれはもう溢れていて一気に引き込まれる。あまり馴染めないと思った「夏すがた」や「あじさゐ」もしみじみとした滋味があるし。あ、もちろん本書の中で唯一得体の知れなさに満ちている「来訪者」も満足。2019/07/04
まぶぜたろう
24
永井荷風を読んでいるが、随筆は結構辛い。確かに美文名文だが古くじじむさい。一方で小説は無茶苦茶に面白い。小林信彦は「荷風はお話がつまらん」と書いていたと記憶するが、いやいや。唐突に変わる語り手、複雑な入れ子型の構造が、その仕掛けを誇示することもなく、すらすらと羅列されるので、読み手は呆気にとられるばかり。「夏すがた」の神楽坂上から見たパノラマ、妾との快楽、「来訪者」のどこに着地するかわからないメタな仕掛け。それらが、いかにもな美文名文ではない、何気ない言葉のリズミカルな配列で素晴らしく読ませるのだ。2025/12/18
-
- 電子書籍
- だから僕たちはモテない【マイクロ】(1…
-
- 電子書籍
- ミッションクリアが世界を救う【タテヨミ…
-
- 電子書籍
- My First DIGITAL『ゴル…
-
- 電子書籍
- 学戦都市アスタリスク 17. 六花団円…




