出版社内容情報
芥川の中期(1921年の中国紀行以後)から晩年までの小説19篇を収録.様々なテーマ、文体を駆使した佳作を精選(解説=石割透)。
内容説明
芥川の作風の転換期とされる中期から後期の作品十九篇を収録した。「年末の一日」は、漱石の墓を訪ねた年末の或る日の出来事と、それに感応する微妙な作者の心情を描き出す。シナリオ形式の作品「浅草公園」など、従来の形式や文体とは異なる作品を模索している芥川の苦闘する姿が窺える、多彩な小説を選んだ。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
新地学@児童書病発動中
118
凄い、凄い、芥川龍之介はこんなに素晴らしい作家だったのだと改めて感動しながら、読んだ。ここに収められている短編は、この作家の代表作ではない。それでもすべての短編が面白いし、文章も読みやすい。読みやすいながら、日本語の美を感じさせる文体はさすがだ。現代人の不安や悲哀、諦観などを鮮やかに描き出した短編ばかりで、古びたところがない。一つ選ぶならシナリオ風の「浅草公園」だ。代表作のような完璧な出来栄えではない。それでも、父とはぐれた少年の不安を描きながら、独特の幻想の世界へ読者を連れて行く。2017/06/25
藤月はな(灯れ松明の火)
108
芥川龍之介が作風を模索していた頃の作品集ですが、やっぱり、この作家は技巧を凝らしても短編がすこぶる巧いと感嘆するしかありません。ラストで捻りを効かせてアッと言わせる「妙な話」や日常を切り取った保吉シリーズも好き。そして作家としても、人生としても師匠である夏目漱石の墓に参った時の不思議な心境を描いた「年末の一年」に何故か、「芥川さんが亡くなる前、父の墓の前に長い間、佇んでいたのを見た」と言う漱石の娘の話を重ねてしまって辛くなった。墓から帰る時に手伝った「東京胞衣会社」の車も何だか、不吉とも取れるのが不気味だ2017/09/04
優希
102
面白かったです。芥川の中期から後期にかけての、作風を模索していた時期に書かれた19編の短編がおさめられています。転換期なだけあり、かつて題材にしていたような古典的や歴史的な作品ではなく、人間模様や心理描写、シナリオ形式の散文といった形をとっており、自らの作風に苦悩していたことが伺えます。とはいえ、どの作品も読みやすく、日本語の美しさを感じました。芥川の天才的な作風は健在なのですね。2017/11/03
Willie the Wildcat
69
日々の生活に垣間見る人間模様と心情描写。時に小気味好く、時に幻想的な世界を駆け巡る。登場する女性1人1人の存在感が印象的。”保吉”シリーズは、その軽妙な時勢描写も絶妙。中でも『あばばばば』における店主夫妻との”間”がいいですね。月を見上げる保吉の心に帰来するものは何ぞや!次に『文放古』。自虐性の中に社会問題を提起。『六の宮の姫君』を読んで謎解き必須ですね。そして表題の『年末の一日』。箱車を押す情景に、師・漱石への著者の想いを感じざるを得ない。2017/08/31
HANA
66
芥川龍之介の知られていない短編を収録した一冊。既読は「妙な話」のみだが、シナリオ調の「浅草公園」漱石の墓参りを題材にした「年末の一日」軽々とした筆調が往年の諸作を思い出す「仙人」と、収録作は幅広く読ませるものばかり。ただ時期的な問題なのか、時代の一断面を切り取ったような話が多いように思える。個人的には往年の古典とかより採った諸作が好きなのであるが、これはこれで何とも言えない味わいがあるなあ。ふとした大正の生活の背後から、何かが顔を覗かせようとしているような。やはり芥川は面白いと実感させてくれる本であった。2017/07/22




