出版社内容情報
帝政ロシアの公爵家に生れたクロポトキンが,アナーキズム運動の理論家として活躍するまでの過程を描いたもの.皇帝の近習から地理学者としてシベリアへ,そしてその土地に生きる人々への愛から運動に入ってゆくさまがいきいきと描かれる.クロポトキン自身を語るとともに革命期ロシアの人と風土を描いて余すところがない.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
アナクマ
27
12章_ニヒリストについて。「西欧ではテロリズムと混同されていた」が、そうではない。誠実さを常とし「理性が正当化しえない迷信・偏見・風俗・習慣を放棄し…権威に屈せず」「どうすれば民衆の役にたつことができるだろうか?」と自問する。「奴隷労働によって蓄積された富を享受することを拒み(奴隷によってつくられたパンはにがい)」「人民の間に腰をおちつけ、人民の生活を生活することだという考えにいきついた」1860年代のロシアの青年たち。若いと切り捨てるにはあまりに純粋で切実な(多少は心当たりのある)情動ではないか。2024/07/16
てれまこし
1
自由・平等・友愛というフランス革命の理想、そして科学と進歩に対する信奉が周辺国に伝わっていく。新しい思想にかぶれた特権階級の子弟が、伝統的な社会に対して反乱を起こす。最初は子の親に対する反乱であったものは次第に社会運動となり、父権的な政府を押し流す高波となる。今となっては陳腐な近代化の物語であるが、この歴史の肥やしとなった人々の熱情がなければ、今の我々もない。この一派の波は確かに我が国の岸辺をも洗ったのである。幸徳秋水や大杉栄のような社会主義者のみならず、有島武郎や柳田国男などもこの波をかぶったのである。2017/12/12
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アナーキズムいわゆる無政府主義の主張の真髄は自ら人民になると言うことであり、官僚制度による中央集権的社会主義とは異なるということがなんとなく理解できました。 学生時代、社会主義思想に憧れて学習したことがあります。できればこの本は学生時代に読みたかった。使命感を感じていたあの頃と比べて今の私は名実共に保守化してしまいました。 レーニンはクロポトキンのことをロシア革命のおじいさんと尊敬していたんですね 初めて知りました2018/03/28