出版社内容情報
一八六五年の第一インター中央委員会での講演.一般的な賃金引き上げは無益であり,労働組合は有害だとする一委員の主張に逐一反駁を加えたあと,マルクスは自己の構築した経済学に基づいて経済闘争と政治闘争の関係,労働組合の使命などについて積極的な主張を展開する.主著『資本論』への最善の,そうして最も平易な入門書.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
おたま
52
これは、マルクスが1865年6月に、ロンドンの第一労働者インターナショナルの中央委員会で行った講演を本にしたもの。同じような厚さとよく似た書名のため『賃労働と資本』(1849)と同様な『資本論』の入門書と捉えられているが、本書の方がはるかに『資本論』に則している。すでに『資本論』の草稿が書かれていた頃であり、その内容が直接的にこの講演に援用されている。第一インターの成員であったウェストンの提起した問題に対して答えるという形を取りながら、マルクスは自説を展開していく。2024/05/13
OjohmbonX
11
なんで21世紀なのに週5日も働かなきゃいけない!ってずっと思ってて、読んでみたら多少はすっきりした。労働力の買われ方(賃金制度)に根差して本来の労働価格以上に働かされて利潤が生じる。当時と今でその制度の基本は変わってない雰囲気(労働時間規制や残業代があっても)。それより本書は、ある通俗的な認識を批判する講演録で、具体的にこういう現実的な差異を無視するから謬見に至るんだよっていう、正しさに対する批判というより妥当性に対する批判になってて、零れ落とされた物を拾ってあげて別世界を見せるって作業はわくわくする。2013/05/19
tharaud
8
資本論のエッセンスがよくまとまっており、よい復習になった。「賃上げは無益で労働組合は有害」とする第一インターの一委員の意見への反論ということで、勢いのあるマルクスの論説を楽しめる。労働組合は「賃銀制度の廃止!」を目指さなければ「一般的に失敗する」という結論部での主張にギョッとするが、考えてみるとマルクスだもの、そりゃそうだよな、と納得。2025/01/28
nobody
6
商品の価値とは何か、本書には労働の分量が決定的要因であるとしか書かれていないが、続けて『賃労働と資本』(国民文庫)の「エンゲルスの序論」を読むと氷解する。「十 利潤は商品を価値どおりに売ることによって得られる」の章など特に難しく、マル経をマスターしている人を横につけてその都度「ここではマルクスは何を言おうとしてるの?」と確認しながら読み進められたらどんなによかろうと思った。マルクスは最後に決議案を提出しているが、その第一の「賃銀率の一般的騰貴は諸商品の価格には影響しないであろう」というのは誤りではないか。2016/05/14
makoppe
6
前半はわかりにくいけど進めば進むほど、マルクスの理論がすっきりまとめられている。マルクスの入門として最適。賃上げの話を基礎において理論が組み立てられているので、組合に関わる人にも是非読んでもらいたい。付録の「労働組合の現在・過去・未来」も読む価値あり。2015/07/16