出版社内容情報
「人口論」の著者のもっとも円熟した著作.価値,価格,利潤などの経済学上の重要概念を検討・定義した古典的労作である.諸学者の学説の正否を論評しかつ自己の積極的な主張を掲げている.マルサスの経済学上の地位を知り,さらに古典派経済学を研究するための有力な手がかりを得る注目すべき書.現代経済学の究明にも役立つ.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
壱萬参仟縁
22
1827年初出。経済学は数学に近いとはいえ、倫理学や政治学に近いとマルサスは考えている(9頁~)。社会的富(ウェルス)と個人的富(リッチズ)(14頁)。ラスキンになるとこういう認識ではないと思う。富の科学は舞台芸術の諸原理にかんする理論を包含しなければならない(59頁)。 これが、ボーモルやボーエンや文化経済学につながっているのではないか。 富という術語の物質的対象物に限定されるべき。生産的労働は直接に富を 生産する労働だけに限定(169頁注)。 2014/07/26
Francis
8
10年間積読。ケインズの「有効需要理論」の形成に大きな影響を与えたロバート・マルサスの「人口論」「経済学原理」と並ぶ主著。需要と供給の関係、「(商品の)価値」と「(市場)価格」の関係についてマルサスの思考過程が読み取れる。マルクス経済学が重視する「労働価値説」について近代経済学の初期どんな議論がされていたのか知ることも出来る。近代経済学が労働価値説を論じなくなったのにもかかわらず、社会科学として発展を遂げることが出来たのかについて示唆を与えられた気がした。2025/02/24
うえ
7
晩年の書物。「アダム・スミスが術語の使用上で最大の誤りを冒したのは、真実という術語の適用においてである。かれは一商品の真実価値を、それが支配する労働の分量であると、明白に、またくりかえし述べ、これを名目価値、すなわち貨幣その他の特定名称の商品で評価した価値と対比している。けれどもかれは、このように真実という言葉をこの意味で用いているのに、賃銀にたいしてはこれをまったくちがった意味に適用し、労働の真実賃銀とは、労働者がそのうけとった貨幣によって支配することのできる生活の必需品および便益品であるといっている」2019/09/10
シンドバッド
5
学生時代に読んでおくべきであった本書を、ようやく読んだ。40年前の、経済学部の講座やゼミとは、今は、大きく様変わりしていると考えられるが、経済学史の古典との位置付けだけでは無く、一読に値する。と、気付くのが、遅い。2014/04/15
ヒデアキ
0
再読。マルクスの経済学批判に似た課題意識・テーマ感で経済学の歴史と現状を整理し、科学として経済学を発展させるために越えなくてはいけないポイントについて当代の経済学者についても言及しながら論を展開するのは凄い。2024/07/22