出版社内容情報
経済学の最初の体系的叙述として古典中の古典と称せられる名著.近代市民社会を科学的に分析して,いわゆる「見えざる手」による予定調和的自由放任政策を主張した.後のあらゆる諸学説はここに源を発する.新訳.(全4冊)
内容説明
経済学最初の体系的叙述として、古典中の古典と称せられる不朽の名著。いわゆる「見えざる手」による予定調和的自由放任政策を主張した本書は、その実質において近代市民社会の科学的分析であり、後のあらゆる諸学説はここに源を発する。新訳。
目次
第1編 労働の生産力の改良、および労働の生産物が民衆のさまざまな階級のあいだに自然に分配される順序について(分業について;分業を生む原理について;分業は市場の広さによって制限されるということ;貨幣の起源と使用について;商品の実質価格と名目価格について、すなわちその労働価格と貨幣価格について;商品の価格の構成部分について ほか)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
加納恭史
21
アダム・スミス著「道徳感情論」はなかなか難解でしたが、この本は非常に読み易いので驚いた。第一編「労働の生産力の改良、および労働の生産物が国民のさまざまな階層のあいだに自然に分配される順序について」。第一章分業について。労働の生産力の最大限の改良と、それがどこにむけられたり、適用されたりするさいの熟練、腕前、判断力の大部分は、分業の結果のようです。分業がしばしば注目されてきたピン製造の職業から一例を説明する。一人は針金を引き延ばし、別の人はそれをまっすぐにし、三人目はそれを切断し、四人目はそれをとがらせ・・2022/06/27
泉のエクセリオン
9
経済学の体系的叙述として、古典中の古典とも称せられている。どんなことが述べられているのかというと、資本主義経済の仕組みである。何度も強調される「商品の価値は働く人の労働によって決まる」や「分業が労働力の増大を引き起こす」ことや「商品の価格は労働、地代、利潤に分解出来る」などなど・・資本主義社会に生きていれば当たり前のことなのだろうが。又、社会の仕組みを経済学という観点から分析した点は、経済学であると同時に社会科学であると思った。又、どんな立場の人でも避けることの出来ない本なのかと思った。2024/12/14
てれまこし
8
経済学の古典として有名であるが、政治思想史上でも見落とせない一書。ルネサンス以来流動化した政治秩序を立て直すために近代国家理論が生れたが、それと並行してスミスは合理的な個人の相互作用に基づく秩序がありうることを示した。そのような秩序は自然に形成されるため、国家の強権は最小限でよろしい。情念が物欲のみに還元されたが故に、共和主義の伝統、つまり人民の自治能力に対する信頼が、スミスにおいては自由主義社会に翻訳される。もはや英雄は要らず、商人、労働者、農民が平均的な理性と倫理観を使用するのを邪魔しなければよい。2018/09/16
CCC
8
「見えざる手」云々程度の知識しかないけど読んでみた。見方がとても近代的で、その分かえって節々から文化や環境、状況の現代との違いが強く感じられました。昔の人の生活環境やなんかが滲み出てて面白かったと思います。2013/09/25
壱萬参仟縁
6
本著は、学部時代に社会思想史で、院生時代に開発経済論で学んだ。そして、今回再度紐解いた。分業の必然性。これは官僚のセクショナリズムと比較してもいいだろう。専門化させていいことと悪いこととあるためだ。現代のgood governance下では、手仕事全体の生産物の増加が民衆にまで広がる普遍的富裕をつくりだす(33ページ)。現代的意義がある箇所。貧富は財の享受能力の程度に依存する(63ページ)。本著の国の富は、日本の国富でならどのような説明ができるか。そんな疑問も湧いてくる。今の真の国富の姿を明らかに。2012/11/28