出版社内容情報
ホッブズ最初の政治学書。国王と議会の対立が最高潮に達したのを目にし、すべての人間が安全に生きるための政治原理を提示した。
内容説明
1640年に書かれた、ホッブズ(1588‐1679)の最初の政治学書。国を二分するほどに激化した国王と議会の対立を目にし、すべての人間が安全に生きるために政治はどうあるべきかを原理的に説いた。のちに主著『リヴァイアサン』(1651)で詳しく展開されることになるホッブズ政治学のエッセンスは本書ですでに提示されていた。
目次
第1部 自然的人格としての人間について(人間の自然的能力の一般的区分;感覚の原因;想像および想像の種類について;さまざまな種類の心の推論について;名辞、推理および言語による推理 ほか)
第2部 政治体としての人間について、法の性質と種類について(コモンウェルスの設立に必要な要件について;三種のコモンウェルスについて;主人の権力について;父権および世襲の王国について;各種の統治にみられる不都合の比較 ほか)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
壱萬参仟縁
40
自然的な法と政治的な法とは? 人間の本性、性自体、法をしっかり知ることが重要(18頁)。人間の本性:栄養、運動、生成、感覚、理性の諸能力、自然な諸能力および諸力(20頁)。人は、ある先行事象には同じ後続事象がともなうことを習慣的に知ったのちには、以前に見たことがあることには同じことが続いて起こることを知る(43頁)。経験知を江戸時代に把握していたようだ。過去や将来を推測するさいに、起りそうなことあるいはすでに起ったことを、経験から結論づけることが慎慮と呼ばれる(46頁)。2017/03/13
ラウリスタ~
14
ホッブズって『リヴァイアサン』以外は最近になるまで翻訳されていなかったらしい。この本でようやく出揃ったと。読んでいると、あくびが出そうになる当たり前のことがず〜っと書かれている。それはよく考えるとすごいことで、「世界初の近代政治学者」が1640年に書いた初めての政治学の本の中で、のちに彼のものとして知られることになる主張がすでに現れているということらしい。前半で人間の本性について考え、それを踏まえた上でその人間によって構成される政治体のあり方について考える。2016/05/30
cockroach's garten
13
『リヴァイアサン』で有名なホッブスの最初の政治学書。自然状態では人間は常に争うということをこの頃から提唱している。一章では感覚論に基づいて、人間の本性を説明していく。二章ではその人間をどう抑えるかという説明をする流れだ。それは無条件の権力に対しての容認を求めるが、同時に権力の象徴である君主の答えるべき義務も求めている。キリスト教の引用が多くて読むに堪えなくなる場面があったが、ホッブズは権力構造を説明しただけで、擁護はしていないという印象を受けた。当時イギリスが混乱していただけにこの説明は重要だったのかも。2017/03/27
シンドバッド
6
大学時のリヴァイアサンから約40年。そしてこの数年のホッブスの文庫 いずれもわかり易い。特に本書は、ホッブスの根底に触れることができる。2016/06/17
うえ
5
「政治体というものは、もともと仮構上の肉体ですので、政治体の諸能力と意志も仮構上のものに過ぎません」「民主政ではすべて…ごく少数の人びとが全体を支配するということにならざるをえない…民主政とはつまるところ、演説者の貴族政にほかなりません」「神法・自然法・市民法という法の区分の第一のものについていえば、最初の二つの法はまったく同一の法であります。といいますのは、自然法は道徳法でもありますので、自然法の作者である全能の神の法にほかならず、また私たちの救い主キリストが教え給うた神の法も道徳法だからであります」2016/10/08