出版社内容情報
イギリスの政治哲学者ホッブズ(一五八八―一六七九)の主著.各人が各人を敵に争う戦争状態こそ人間の自然状態であり,国家とは,平和を維持するために絶対主権をもって君臨すべくつくりだされたいわば人工の人間にほかならない.書名を聖書に語られる巨大な怪獣の名にもとめた本書は後世に絶大な影響を及ぼした.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
壱萬参仟縁
36
除籍本。1651年初出。全巻はもらえなかったので残念。前半は総括と結論。後半は注、附録、索引から成る。第46章と前半の総括と結論を読む。哲学とは、あるものごとの生成のしかたから、その諸固有性にいたり、あるいは、その諸固有性からそのものの生成の、ある可能的な経路にいたる、推理(リーズニング)によって獲得された知識であり、それは、物質と人間の力がゆるすかぎり、人間生活が必要とするような諸効果を、生みだしうることを目ざしているものである(105頁)。2015/12/09
Francis
14
第4分冊も第3分冊に続いて聖書からの引用。はっきり言えばこの第4分冊は第3分冊とまとめてしまっても良かったのではなかろうか。それからモーゼをモーシェとか書くのは止めてほしかった。何で慣用として使われている表記にしなかったのか不思議。2020/09/18
ハイちん
13
ホッブズが決着をつけたかったのは「神様と王様はどっちが偉いの」という問題だと思う。国家は、主権者(王、政府)のことば(法律)に国民が臣従することによって成立するのに、主権者よりも神の方が偉いということになれば、神のことば(教義)を扱うもの=教会が力をつけるのは当然で、教会によって国家の存続が脅かされることになる。ホッブズの苦悩は、自らがキリスト教徒でありながら、教会を批判することにあった。教義に反すれば異端のレッテルを張られるのに、ホッブズは恐れず誤った聖書解釈の愚かさを説き、法律と教義を分離する。2016/07/10
6 - hey
9
暗黒の王国という表現が面白い…のだが、もはやキリスト教徒以外は読めないのではないだろうか…2012/11/15
Fumoh
7
第四巻の主題は「暗黒の王国」であるが、これは「人々を暗黒(無知)の状態に置くローマ教会」を指したもの。ローマ教会は、定められた聖書解釈(公会議によるもの)に基づいた秩序しか許さず、自由な学説を排斥した。ローマ教会による人々のこころの支配は重いもので、ヨーロッパ中世は「暗黒期」とも俗に呼ばれる。それが破られたのはルネサンスにおいてであり、また宗教改革、三十年戦争で新教が認められるようになるなどと、段階的な変化と解放が果たされてきたが、一般民衆のこころはまだまだ自由とはいえなかった。ホッブズはローマ教会批判の2024/12/09