内容説明
ゲーデル(一九〇六‐七八)の不完全性定理論文は、数学の定理でありながら哲学、心理学、現代思想、情報科学などの研究者をひきつけ、様々な影響を与えた。「解説」では、不完全性定理論文の歴史的経緯を説明し、その内容を丹念に解説する。
目次
第1部 翻訳
第2部 解説(不完全性定理とは何か?;厳密化、数の発生学、無限集合論 1821‐1897;論理主義:数学再創造とその原罪 1884‐1903;ヒルベルト公理論:数学は完全である 1888‐1904;数学基礎論論争 1904‐1931;不完全性定理のその後;不完全性定理論文の仕組み;論文の構造;あとがき)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
林 一歩
22
入院でもしない限り読まないだろうなと思っていた本ですが、読み始めると割と短期間にすらすら読めて楽しめた。ある意味禅問答のような感覚だが、数学とは極めて人間臭い学問なんだなと再認識。面白い!2014/05/27
金吾
19
時間を掛けて読みました。わかったような気になりますが、錯覚だと思います。不完全性定理自体は面白く感じますが、数学にはイメージほど影響を及ぼしていないのが意外でした。論文はよくわかりませんでした。頭を整理してもう一度読んでみようと思いました。2024/06/20
LUNE MER
17
最近Twitter上で「現代数学は間違っている」というアカウントが登場し、「空集合は存在しない」「選択公理は間違っている」等の主張を行い、数学界に革命を起こすと息巻いている。どうやら本人はあまりご存知ないようなのだが100年ほど前にホットだった話題で、彼の主張を見ながら「そう言えばあの概念ってどう整理されてたっけ?」という復習をしたくなって、その辺の数学史に詳しい本書を再読。ゲーデルの原論文とその解説という構成だが、全体の3/4を占める解説の方が滅茶苦茶面白いというある意味歪な本。2023/02/08
壱萬参仟縁
12
数学のみならず哲学、心理学、思想、情報学でも高い関心を得た(表紙折返し)。1931年初出。まえがき で指摘されているように、難解なもので意味の理解は素人では困難だとわかる(8頁他)。脚注もあり、論文そのもの。証明で用いられる論理式、命題、変数は、」常に同型像内の対応する対象であると考える」べきだという(18頁脚注)。人工言語で記述された数学は、その表現力が十分豊かならば、完全かつ無矛盾であることはない。数学形式系の表現力が豊かならば、無矛盾の事実はその系自身では証明できない(76頁)。数学的不完全性定理。2013/09/23
キョートマン
9
不完全性定理自体は難し過ぎて理解できなかったので、それを取り巻く歴史の解説をメインに読んだ。形式主義だとか論理主義だとか直観主義だとか、ふんわりとしてイメージを掴むのが精一杯だった。ただ、世間で言われているほど不完全性定理は数学に影響を与えていないということが印象に残った。2021/08/30