出版社内容情報
白墨の一片のような物についてでも,究極まで考究してゆけば,宇宙の歴史が読まれるのだということを示した講演「一塊の白堊」.科学精神の提唱者であり,民衆の科学的啓蒙に努めたイギリスの動物学者T.H.ハックスリ(1825‐1895)の著作5篇と自伝を収めた.進化論を支持して論争の矢面に立ち,その普及にも努力した.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
猫丸
16
「ダーウィンのブルドッグ」T.H.ハックスリの一般科学論議。19世紀に生きたロイヤル・ソサイエティ会頭は教権主義に抗する懐疑主義の闘士であった。その人となりは、科学と文学に沈潜しつつも博物学の探検航海に乗り出す積極性も持ち、修辞に彩られた華麗な文筆の才に恵まれながら弁舌に自信の持てない内気さも見せる多面的なものだ。「ある大きな力が私を一種の時計に変え、私につねに真であるものを考え為させるよう同意するなら、私は即時にその申し出を承認すべきと誓言する」という意味での人間機械論。1940年の翻訳文体が晦渋。2019/04/24
壱萬弐仟縁
8
ヂュリアンでも、オルダスでもない、ハックスリー(201頁)。トマスの専攻は化石脊椎動物学(206頁)。厳格な規律のもとで生活。生存の真実に没入すること。ココアとビスケトを朝食として人生を生きることが極度に価値のあることかを意味出すこと(19頁)。こうした指摘を受けると、今の食生活が如何に幸せなのかと思う。「文學が授けることになつてゐる總てのものは、讀書によつて、そして書くことと話すことを實行することによつて得られる」(190頁)。読書と書くことを繋げる、本読書Mは重要な文化活動であることを証明している。2014/01/24
kazutox
3
ハクスリー一族の祖にして「ダーウィンのブルドッグ」で有名なハクスリーの本があるとは、岩波文庫の世界は奥が深い。1940年の訳で、持って回った英文を直訳したような悪文のため、意味が取れないところが多々ありました。とりあえずわかったことは、1) 一般人向け啓蒙活動をやってた教育家だった。2) 権威主義は否定しつつ、キリスト教の価値は認めている。猛犬ではなく穏当な人だったとは。2023/02/07
讃壽鐵朗
2
内容的には興味を感じるが、翻訳があまりに古く理解しがたい2015/04/14