出版社内容情報
現代一流の芸術史学者たる著者(1881‐1965)が,ここに展開した独創的な意図は,西洋芸術のみに優位性を認めていた従来の西洋美学の欠陥を指摘し,東洋芸術,原始芸術にも対等の地位を与えることであった.今日の美術史のもっとも重要で興味ある諸問題に答える本書こそ,現代美術の動向に関心を寄せる人びとに深い興味を喚びおこさずにはおかない.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
壱萬参仟縁
8
旧字体。芸術作品の美学、造形芸術の美学(15頁)。≪民衆芸術≫は人を驚かせるリアリズムで、書記や村長の像を作り出す(29頁)。ゼムぺルの『様式論』にあるようだ。難解な説明。「装飾の本質は、その中に一つの民族の芸術意欲が最も純粋に、最も明澄に表現されているという点に存する」(77頁)。北方人(スカンジナヴィア半島)の芸術意欲は、抽象的だが、東方的芸術意欲ほどの強度と緊張をもてなかった(143頁)。有限性から解放された抽象形式は、カオス状態に当面して平静を得る。他方、人間悟性の合法則性を反映(177頁)。2013/12/16
あかふく
6
古代芸術を技術の稚拙さからくる造形であるという近代美学の主観主義的な思想を相対化するために、リーグルから継承した「芸術意欲」という概念をもとに「抽象衝動」による芸術という考え方を設定する試み。リップスにより確立された「感情移入」説は人間と自然の親和性という西欧的な考え方に基づき西欧中心主義的で、古代や東方の芸術を発展の未熟な段階として考えるが、「抽象」による芸術は自然に対して感じる内的不安に発する異なる芸術の形象を持つとすることで評価できるということを論じる。自然美と造形美の違いや自然主義の問題なども。2014/01/12
うえ
3
「人間と外界との間の対決過程は、いうまでもなく専ら人間のうちで行われる。従ってそれは、実際においては本能と悟性との対決に他ならない。我々が人類の原初的状態について語る場合、我々はややもすれば人類の理想状態と混同し勝ちである。そして常にルソーのように、あらゆる生物が幸福な純潔と調和のうちに全体的に生きていたところの人類の喪われた理想郷を夢みる。しかしながら、この理想的状態は原初的状態とは何らの関わりもないのである。…本能と悟性とのあの対決は、むしろ悟性に対する本能の絶対的偏重からはじまっているのである。」2023/09/05
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