出版社内容情報
科学的な方法による宗教心理学の最初の労作として不朽の名著.宗教を異常な精神現象のうち最高のものと見なす著者は,「健全な心」と「病める魂」の二つの傾向をあげ,両者における宗教的態度を多くの人々の厳粛な経験に照らして観察し,回心,聖徳,神秘主義などの現象を究明する.一九○一―二年のギフォード講義の記録.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
やいっち
67
初めて読んだのは学生時代だった。本書を知ったのは、訳者が桝田啓三郎だったからか、それともプラグマティズム絡みでか覚えていない。題名に惹かれたのは間違いない。大部の上下巻は読ませた。科学が発達しても、宗教的経験はそれはそれとして厳然と在り続ける。数年前に再読したけど、三度めはきつい。ブライアン・グリーンの本でも
buuupuuu
25
下巻では、回心後に示される様々な聖徳とその価値、そして神秘体験が論じられる。面白いのは、バランスを欠いた極端な聖徳はかえって悪徳であるとするところ、そして絶対的な理想型というものはなく、様々な状況へのそれぞれの適応があるのであり、評価の観点も一つではないとするところだ。ジェイムズは宗教の本質を上位の力との結びつきによって肯定感を得る経験に求めている。宗教においては生きることそのものが重要であり、知解することは二次的な事柄だということだろう。とはいえ、ジェイムズは多神論的な形而上学を構想しているようだ。2024/03/13
Uncle.Tom
22
膨大な資料をもとに宗教の意義を見出してくれる一冊。もはや現在では宗教は過去の遺物であるように思われています。しかし、宗教的経験にはこの希望を見失ってしまいがちになる今の世の中において、彼も主張するように、それを肯定し力強く生きていくための可能性が秘められている、と感じさせられます。とはいえ、現代に宗教を本格的に復興させる方が良いとも思いません。それぞれの個人の問題に根差し、それぞれの個人に回答を与える、そのような宗教的経験を各人が抱ける社会にしていくことが僕らには必要なのでしょう。何度も読み返したい一冊!2019/10/29
きゃんたか
19
宗教の果実は常識によって判断されねばならない。行動の判断基準は意図と遂行者と受容者の関係適性。聖徒たちこそ善の創造者、作者、増進者であり、彼らの過剰な慈愛こそ真に創造的な社会変革力である。現代人の不幸は安楽に過ぎない幸福と貧に対する恐れ。禁欲的自由と内的興奮はこれらに勝る。この世の強者はキリストに敗れたナポレオンの如し。そこに真の個性は無い。宗教の本質は無限者の実在感覚、有限者の合一体験、真の本性への目覚め、祈りによる神秘との生きた交わり、より低い部分の破綻に連なるより高いものとの接触、理想的衝動の実現。2016/09/27
K
9
下巻では、回心した後の聖徳を持つ人間のありよう、合一経験としての神秘主義などの主題を扱う。「「必然的確実性」のおかげで流布したなどという宗教は未だかつてない」として実際に実在するかどうかは二次的であり、神についての問題は、いかに人間にとって有用か、適しているかが重要なのだという見解はズバリな感じがして興味深かった。また、経験が第一で、宗教哲学は二次的だと言い切っている姿勢もなかなか痛烈。合一経験について、潜在的意識を持ち出すことで、私の作用でもあるが、外的な要因もあるとする考え方は面白いが納得はしてない。2024/06/06




