出版社内容情報
若くしてドイツ・ロマン派の中心に立ったシェリングが,対話篇の形式をかり,自己の同一哲学の壮大な構想を,ルネサンス・プラトニズムの代表者ブルーノの口に託して展開したもので,生来めぐまれたシェリングの文才が流露した美しい作品である.またフィヒテ哲学との原理的な立場の相違を浮き立たせた対決の書でもある.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
lily
131
ケプラーの法則や万有引力などの天文学も介して、神と自然を分離せずに神聖な統一を目指しスピノザを超越しようとしたのだろう。学問の発展は批判の歴史でもある。後にヘーゲルに批判されることになる。それにしても善い読書を重ねることは真理と同一である美を求める崇高な行為であるという想いを一層加速させる。唯一の確信的な直感だ。2019/07/31
またの名
10
一人で何ページもブルーノが長広舌を振るうくらいなら対話形式でなくても良さそう。芸術も哲学もそれぞれの仕方で美=真理のイデアを目指すという一者と一者の対立を軸にする思想が、いくつにも形を変えて展開。対立を統一すると今度はその統一と対立するものが生じるのでそれをさらに統一して…というヘーゲル弁証法の兆しを予感させる議論において、見慣れた万物の景色に潜む絶対者のイデアは、そのイデアを対立するおのおののバイアスによって違った仕方で反映する対立構造の中で示されると議論。理論というよりは半ばポエジーに動かされた書物。2018/04/30
CCC
4
対話形式でも全然易しくなっている気がしない。登場人物の理解力がありすぎてついていけない。絶対的な存在についての考え方とかでスピノザ思い出すところがあったけれど、そっちはもう少し読む楽しさがあったような。なかなかページが進まなかった。記述形式はこっちの方が分かりやすそうなのになあ。2017/01/17
T. Tokunaga
2
非常に単純に言ってしまうと、これは私の仏教系の中学の宗教の時間にいっていた、一如というのを西洋哲学の考え方として理論づけたなかの1冊であろうか。悟性と直観でひとつ、それが合わさったものが概念であり人間の認識、というのが軸で、それを事実性と可能性、有限と無限、などに変奏してゆき、それらがまたひとつになったものが宇宙であり絶対者であり神。浄土系の仏教みたいだな。2022/04/01
Yuki
1
ブルーノが暴走する部分は別として、シェリングの同一哲学が体系的に、かつコンパクトに述べられている良書。2017/10/15