出版社内容情報
シェリングはこの書で，意志の自由，善と悪，人格性，必然と自由などの問題について徹底的な解明をこころみた．ヘーゲルとショウペンハウエルをつなぐドイツ観念論哲学の最後的決算ともみられるこの労作は，今日われわれが直面している自由の問題に対しても，一つの示唆と正しい方向を与えるであろう．
内容説明
意思の自由、選択の自由はどこからくるのか。悪をも択びとりうる人間的自由は何によって根拠づけられているのか。円熟期のシェリングが、主題とこれに関連する問題、神と自然、人間精神、善と悪、人格、愛と憎、必然と自由等について徹底的な解明をこころみた著書。ドイツ観念論哲学のひとつの最後的決算ともいうべき労作である。
目次
第１ 序論（人間的自由と体系一般との関係；自由と汎神論 ほか）
第２ 悪の一般的始源と発生（自由の実質的本質）（実存する限りの存在者と単に実存の根底たる限りの存在者との区別；悪の可能性 ほか）
第３ 人間における悪の実現（自由の形式的本質）（人間の元初的行；人間における悪の現象）
第４ 神の愛（弁神論；無底 ほか）
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
JVSTINVS
3
「神がいるなら、なぜ悪があるのか？」というクラシックな問いの答えとして、「世界を創造したら、そのなかに、自由として悪が被造物のなかに勝手に現れた。しかし、その勝手に現れた悪は、おなじく勝手に現れた宗教心によって克服可能。根っこには無底としての愛があるから」という鮮やかな言明を用意している魅惑的な本。そうか、こういう方法があったのか。神は全能だが、意に沿わないことが起こりうるリスクもおかす、ということだろうか。リスクがおかせてこその全能だろうか。2023/03/27
田蛙澄
3
人間における過去も未来もない決定の現在性についての詳細に知りたくて読んだけど、そっちは『世界時間論』の方らしい概説の記憶が混同されてた。神における愛による光と闇の原理の統合が、創造を機に根底からでた我性が中心から離れることで悪となるのは面白い。我性が統合されてると愛の精神となっているが、しかし根底や潜在的悪があることで生き生きとした人格としての神になるというのは、神の自己認識としての人間でも善悪の選択があるところの善が必然的だが自律的な自由ということになるのだろう。無底としての無差別な神も興味深い。2019/12/10
ppp
3
神学や厳格な因果関係を含意する世界観を持たない日本人、少なくとも自分にとっては、やはり、この著作はSchelling自身の自由論というよりも、特に自由、道徳に関するSpinoza解釈に見える。しかも肝心の、神の「愛の意志」で提示される善と、倒錯した神としての我々の「悪」の対立の内実は、ごく比喩的にしか示されていないように見える。Schellingの意図は主に弁神論だからしょうがないのだろうが、彼の思想を人間観に適用して、倫理学に位置づけようとすると、結構面白いことになりそう。2013/06/06
ppp
3
Humeにおける必然性、悪、神に付随して読むべきと思い読了するが、そもそもHumeとSchellingとでは宗教観及び認識論の前提がかけ離れており、特にSchellingにおいては、容易に「善悪」が倫理と結びつかない点に苦労する。そもそも悪の発生の根源、一般的形式を考察する著作なので致し方ないか。ただ、「善」なら何でも神に押し付ける単純な神学とは異なるSchellingの神概念は勉強になった。2011/08/21
フリウリ
1
3/10 神は内なる二元的対立（愛の意志、根底の意志）から生じる。神の顕示に対する根底（＝存在）の反作用により悪が生じるから、人間も生まれたときから悪の要素をもつ、という。そもそも、なぜ悪が自由とかかわるのか、がわかりにくい。自由と必然性との調和、という考えゆえか。現代人は自由を、必然性（因果性）から離れること、と理解する。自由と必然が調和するのは、神の世界である。S氏はこの考え（＝神学）に執着し続ける。神学または神を語る哲学には、常にニーズがある。もし彼が「神学」をエポケーできていれば、と想像する。2022/08/24
