出版社内容情報
貴族令嬢ジュリと家庭教師サン・プルーの間の,愛と貞節のこの書簡体小説は,「告白」「エミール」と並ぶルソーの三大長篇のひとつである.過去の恋の思い出と,妻および母としての義務との板挟みになってついに力つきて倒れるジュリの運命は,ルソーのロマンティシズムと革命的社会観とを,その優麗な描写の中にあますところなく語る.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
lily
140
18世紀のヨーロッパで最も売れた小説である理由も納得。難易度は高いけれど、プラトンの恋愛哲学や誇張した熱烈なメタファーを駆使した書簡を手本にして、渾身のラブレターを愛する人に読んで欲しいという一心だった人も少なくなかったのだろう。これほど天まで燃え盛るような情熱は見たことがない。2019/09/05
ケイ
124
愛を阻むものが、身分の違いや親の決めた結婚であるということは、この時代にはよくあったであろうから、まず結ばれない不幸を嘆く理由が現代とは違う。今でも確かにあるが、現代には立身出世やつく職業を選ぶことでその格差を縮めることもできるからだ。だから、ジュリの置かれた環境がどれほど酷いものかとまず受けとめなければならないと途中から思った。この巻では、どうもジュリの父親に対して憤慨してしまうが、ルソーの語るポイントはそこでは無いのだと自分に言い聞かせる。その環境でつづく二人の互いへの愛にポイントを置かなくては。2017/08/23
NAO
51
ジュリのそばを離れたサン=プルーの手紙は、熱い恋情を語るだけでなく、それ以上に随想的哲学的な内容がふんだんに盛り込まれている。さすが、思想家ルソー、恋愛小説もただのラブロマンではなく、哲学的思索の書でもあるとは。ただ、ジュリのフランス人贔屓は、ちょっと鼻についた。2017/04/23
とまと
5
この数ヶ月読書してきたのはこのような本に出会うためだったとすら思う。そしてこの先に読むべき読みたい本が広がっている。2012/09/03
しんすけ
2
サン=ブルーとジュリーの恋は無理解なジュリーの父によって破綻に向かう。ジュリーは父の友人の五十男に嫁ぐことになった、ストリーはそれだけだが、ルソーは本巻でサン=ブルーに当時の自分の思惟の一端を見せている。従ってストリーは単調だが、ルソーの精神史として読めば興味尽きないものがある。その一つとして、「『余は独居せる時ほど孤独ならざるときはない』と古人は申しましたが、このわたしも群集の中にいる時だけが孤独なのでして...」とサン=ブルーに書かせているのは、ルソーの理想主義が孤高であったことを教える。2016/06/29