出版社内容情報
貴族令嬢ジュリと家庭教師サン・プルーの間の,愛と貞節のこの書簡体小説は,「告白」「エミール」と並ぶルソーの三大長篇のひとつである.過去の恋の思い出と,妻および母としての義務との板挟みになってついに力つきて倒れるジュリの運命は,ルソーのロマンティシズムと革命的社会観とを,その優麗な描写の中にあますところなく語る.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
lily
145
序の3ページを読めば面白さは獲得したも同然。美点に対して敏感であること、敬うべきものを愛すること、つまり崇めるところは肉体の魅力よりもはるかに感情の魅力。頰を赤らめずにはいられないほどの熱烈な書簡集はここにあり。『エミール』と『社会契約論』の産声もここで聴くことができる。書簡を食感としたルソー思想のスクランブルエッグだ。2019/09/01
ケイ
120
序が2つあり、ともにとても読み応えのある文章。貴族の娘ジュリと身分の釣り合わないサン=プルーの書簡からなる本文は、恋人たちの言葉が時代的に仰々しいところもあり、読むのに少し難儀した。愛するということはどういうことかを考えると、サン=プルーの気持ちは、性急で身勝手にも思える。言葉に出さず、相手の立場を思いやるという事がない。若さゆえとは言え、子供っぽさを感じて、ジュリにはもっといい人もいるように思えるのだが、まさに恋は盲目。あと3巻。2人の運命は、序文から想像がつくものになっていくのだろうか。。。2017/08/02
NAO
54
「アベラールとエロイーズ」の恋物語になぞらえてルソーが書いた書簡体の恋物語。教え子である大富豪の貴族令嬢ジュリに身分違いの恋をしたサン=プルーの恋情が狂おしいまでの熱で記されていく。恋は盲目というけれど、この熱狂ぶりはいささか度を越しているのでは、というのが正直な感想。一人浮かれて騒ぎ立て、恋人の名誉を傷つけたりや迷惑になっているなどとは全く考えもしないサン=プルーには怒りさえ覚えるが、それだけ恋はエゴイスティックなものだということか。2017/04/20
shinn
10
突っ込みどころ満載なのだが、まず第1巻のあとがきで全編のあらすじを書かないでほしい^^ちょっと読んじゃって、慌ててやめた。10代の貴族のお嬢様と20歳そこそこの家庭教師の許されない愛の書簡体小説なのだが、特に女性からの手紙の訳が敬語が多寡過ぎて非常に読みずらい。途中から敬語を抜いて脳内変換して読んでます^^「あの方はお口をお入れにならずに私の申すことを・・」(口をはさまずにという事か?)「あなたがあの方からお遠ざかりになればなるほどあなたのご境遇のお幸せさは少なくなるでしょう」等々。内容についてはまた次回2021/08/25
とまと
9
訳者によるあとがきにて、物語の概略が書かれている。つまりネタバレ。展開がどうなるのかというわくわく感を当時の読者同様感じたかったのだが、書いてあるものを読みたいという気持ちに抗えずに読んでしまい物語の筋を知ってしまった。その上で読んでも得るものはもちろんあるのだろうけれど、ネタバレって暴力に近いね。笑2012/08/30