出版社内容情報
ヒュームがもっとも脂ののりきった時期に著わしたエッセイ集.勢力均衡・王位継承・理想共和国などを論じた政治論と,商業・貨幣・利子・貿易・租税などをめぐる経済論とからなる.いずれのエッセイも政治・社会・歴史に対する鋭利な洞察の結実であり,社会的現実を最高の関心事とする近代的哲学のあり方を示している.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヒナコ
14
ヒュームの『政治論集』の中でも、(上巻は政治問題についてのエッセイが中心であったが)経済問題に関するものが収録されている。経済問題に関するエッセイでは、政治を論じたものに比べてブルジュア的リベラリストとしてのヒュームの側面が強く出ているように感じた。特に「商業について」と「技芸の洗練と進歩について」は興味深く、経済発展や奢侈の増大は決して悪いものではなく、それを通じて人々が洗練され治安が安定することから、経済発展が肯定的に論じられている部分は、いかにも18世紀イギリスの啓蒙思想家らしい考えだった。→2022/11/04
Ex libris 毒餃子
9
歴史家としてのヒュームを感じられた。2025/01/31
うえ
3
「偉大な哲学者や政治家を,高名な将軍や詩人を生み出す時代は同時にまた,通例,高度の技能を誇る織匠や船匠の輩出する時代でもあります」ポーランドの「貴族階級が王位を選挙制にしているのは王位を定期的にそのときの最高額入札者に売り渡そうとするため」「ローマ帝国滅亡の主因の一つは…十分の一税,関税,および,物品税に代わり,帝国一律の人頭税を設けたこと」「アウグストゥス,ティベリウス…等々のより賢明な皇帝たちは国家の非常事態に備えて巨額の貨幣を備蓄する,という賢明な配慮を,あらゆる場合に見せています」2014/07/08
ぱぴ
2
ヒュームの遺した研究やエッセイの中で、経済について纏められた下巻。生産力の発展が最も重要な事柄とされ、全ての経済的な問題はこれとの関係において論じられており、現在のマクロ経済を考える上でも非常に参考になることばかりだった。下巻を読み進めていくうちに、上巻に記された勢力均衡、古代人口論、王位継承、法慣習三題などとの関連が見えてきて益々面白かった。嫉妬などの情念、意欲や怠惰、勤勉な精神など、人間の持つ自然な感情から事物の成り立ちが解き明かされていて、物事を根本から理解するための非常に有意義な読書体験だった。2022/05/12
遊動する旧石器人
1
1982年9月16日第1刷発行(2008年7月10日第4刷発行)。デイヴィッド・ヒュームのエッセイを集めて上下冊にした下冊。この訳本が80年代に発行されたことも、そして18世紀に既にヒュームによって書かれていたことも驚愕であるが、2020年代を生きている日本人(特に政治家)は、これらヒュームのエッセイには大いに学ぶところがあり、読まれるべき上下冊であろう。ただし、ヒュームの18世紀的な世界観では、2020年代現在時におけるものと異なる様相を示すものがあるが、欧州においてはヒュームの言が皮肉に映るであろう。2024/10/18
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- 和書
- 講義民事訴訟 (第2版)