出版社内容情報
ヒュームがもっとも脂ののりきった時期に著わしたエッセイ集.勢力均衡・王位継承・理想共和国などを論じた政治論と,商業・貨幣・利子・貿易・租税などをめぐる経済論とからなる.いずれのエッセイも政治・社会・歴史に対する鋭利な洞察の結実であり,社会的現実を最高の関心事とする近代的哲学のあり方を示している.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
壱萬参仟縁
42
あらゆるひとが理性の皮をかぶった欲望を指南役にして勝手気ままに各自の私利をはかるようになる(164頁)。きずななくして、社会じゃないねぇ。。権利には二種:『権力』(power)に対する権利と『財産』に対する権利(227頁)。人間は、法律、原則、正義、名誉に関する観念を欠く場合、相互に、殺し合うことさえ、できない。平和、戦争にも規則がある(239頁)。これは1752年時点の著者の見解とはいえ、相手への暴力行使について、規則の重要性を説いている。徳川幕府の誰の治世だったか。同時代の規則への共通認識を問われる。2025/08/28
壱萬参仟縁
39
別のブックオフにて110円。【訳者より読者へ】市民の意味:権利義務の法的関係における平等ないし対等が万人に 実現されている社会(傍点)成員(9頁)。小国における戦争:大国のそれより、ずっと破壊的。∵小国には全住民が兵役に服し、国家全体が国境で、国中が外敵の侵略にさらされているため(71頁)。絶対王政:市民社会と相容れない。市民的な政府の一形態であることは決してできない(傍点、153頁)。きずなを解いてしまうならば、市民社会を成り立たせているすべてのきずなを断ちきり、2025/08/28
ヒナコ
16
哲学者デビット・ヒュームによる政治や経済についての時事問題を論じたエッセイ集。一般的には『政治論集』として知られているものであるが、訳者の特段の思い入れがあって『市民の国について』というタイトルになっている。上巻は主に政治問題について、下巻は主に経済問題についてのエッセイとなっている。ですます調で訳が非常によく、岩波文庫の古い訳の中では非常に読みやすくもあった。 以下、内容。→2022/11/02
壱萬参仟縁
15
アダム・スミスの師匠。1752年初出。市民とは、平等、対等が基本原則の社会成員(9頁)。「政治を科学に高めるために」(208頁~)。「政府の第一原理について」(226頁~)。権利には二種。一つは権力に対する権利。いま一つは財産に対する権利(227頁)。2013/12/11
R
2
哲学者が政治や経済,社会についての考察を展開していく論を何とか追いかけた。学問が分化する前には知性のある人たちがこのようにマルチに活躍していたのだろう。哲学者が当時の社会事情と切り離しては考えられない。2022/04/03