出版社内容情報
16世紀はじめエラスムス(1466頃‐1536)は本書を著し,人間を「痴愚者」の集団として眺め「痴愚女神」に雄弁を振わせるという構想で,中世以来の腐敗したカトリック教会の世界を容赦なく批判し,歪められてきた人間性の救済を要求した.それはまさしくトマス・モアが「ユートピア」寓話に託した主張であり,現代西欧人のユマニスムの基盤であった.挿絵=ハンス・ホルバインほか
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
壱萬参仟縁
6
挿絵もあってなかなかな感じ。賢さとは理智に導かれることで、痴呆とは変転する情欲に従ってゆく(53頁)。挿絵の「民衆といふ数個の頭を持った獣」(76頁)は仏教の仏像の何かとも似ているような感じを受けた。民衆の顔が6名ぐらいはみえるので、反対側にも4人いれば10人ぐらいはその獣には乗っている。美が醜を蔽ひ、富裕は赤貧を、恥辱は栄光を、知識は無智を蔽ひかくしてゐる(79頁)。美、栄光、知識か。自分は素寒貧な生活をしながら、後継ぎを金持に仕立てあげるのを幸福としてゐる男もゐます(135頁)。滅私奉公か。なかなか。2014/02/07
讃壽鐵朗
3
本当にこの書を理解するには、西洋古典の膨大な知識を必要となる2016/01/12
M.I.
2
カトリックの教会をベースとした社会構造・階級・制度ほかを批判し、好きなように生きるのが面白いという、ヒューマニストのインプットということは、当時のキリスト者も目が点になって口を開けたままでは居られない状態だったのではないでしょうか?! ただの哲学者やたんなる教会批判者が書いたものではなくて、ヒューマニストのエラスムスがこの本を書いたことに意味があると思います。2016/01/15
まるめろ
1
事前に持っておかないといけない知識が多いため、調べつつ読んだが理解はあまり出来ていない。人が生きていくのはいつの時代も「世間」であるため、何かにならざるを得ない。人が人そのものとして生きるには、痴愚神に愛されるよりも、痴愚神を愛さないといけないのかも知れない。また期間をおいて再読したい。2020/02/15
イシュア
1
面白いよ2016/08/19