出版社内容情報
共和制を守るために戦った古代ローマ第一の学者にして政治家,弁論家キケロの代表作.ここにいう義務とは,人間として,また市民としての道徳的任務の完遂を意味する.キケロによれば,この義務は,国家(共和制),近親,自己の利益に対して果たされるべきものという.本書は,人生の指針として今日なお示唆するところが多い.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
roughfractus02
8
カエサル殺害直後に書かれた本書は、「他人のものを奪い、或いは他人の損害においてみずからのの利益を増すことは自然に反する」とその出来事を肯定する。後にJ・S・ミルが「他者危害原則」と呼ぶこの一節は、人間社会の自然主義的な成立条件である「義務」の必要を君主にも要求している。著者は動物と人間の違いを未来や他者を予測する理性の働きに見出し、理性による欲求の制御が社会を構成するとした。その際、宇宙の規則に従うとされるストア派的な「絶対義務」より、人間同士が社会を成す際に必要な「中間義務」を「節度」と呼んで重視した。2022/05/16
mfmf
0
滅茶苦茶ストイック(非常にストア派信者的である)。解説読んで背景を知ると、若干負け犬の遠吠えと思わなくもなかったが、道徳的で高貴さを尊んだ末路ということなのだろう。不動産取引の瑕疵担保の問題(当時から法で規定されていたようだ)やギュゲースの指輪等、パーツで読んでも中々興味深いくだりがある。純粋な(?)哲学者と違って、やや世俗的というか実践的倫理に重きを置いているものの、勿体ぶった言い回しが多くて中々読み辛い。当時の倫理観を知るには良い一冊かと思う。2025/03/22
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- 経済のグローバル化と法