出版社内容情報
「君は私の足を縛るだろう。だが、私の意志はゼウスだって支配することはできない」。ローマ帝国に生きた奴隷出身の哲人エピクテトスは、精神の自由を求め、何ものにも動じない強い生き方を貫いた。幸福に生きる条件を真摯に探るストア派哲学者の姿が、弟子による筆録から浮かび上がる。上巻は『語録』第一・二巻を収録。(全二冊)
内容説明
「君は私の足を縛るだろう。だが、私の意思はゼウスだって支配することはできない」。ローマ帝国に生きた奴隷出身の哲学者エピクテトス。精神の自由を求め、何ものにも動じない強い生き方が、弟子による筆録から浮かび上がる。上巻は『語録』第一・二巻を収録。
目次
第1巻(われわれの力の及ぶものとわれわれの力の及ばないもの;どのようにして人はあらゆる場合に人格にかなったことを保持することができるのか;神が人間の父であるということから、どのようなことが結果するのか;進歩について;アカデメイア派に対して ほか)
第2巻(大胆であることと用心することは矛盾しないこと;心の平静について;哲学者を推薦する人びとに対して;かつて姦通罪で捕まったことのある人に対して;いかにして高邁な心と細心さは両立するか ほか)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
115
むかし、岩波版旧訳で読んだことがあるのですが、字の細かさと訳がわかりにくいことがあり挫折しました。今回は非常にわかりやすい話ことばで訳されていて読むことができました。ただっ読みやすさと理解できるということは同一ではありません。エピクテトスが当時の日常において疑問など思ったことを自己省察のような書かれ方をしていますがかなり深い意味がある気がしました。2021/03/05
lily
97
待ち焦がれていた人生談義、ようやく読めた。信仰心から診た価値観のトリセツと背比べのよう。自分を知らず価値観を持たぬ者には耳を貸さないところがエピクテトスの優しさ。裸大絶賛。勇気と平静な心と自由と光り輝く頑強な身体によって。本当に悪いものに対して用心深いために、そうでないものに対して大胆に行動する。法務官の席も牢獄も場所であり、一方は高く、一方の低いが、意志は等しく保つことができる。哲学するというのは、判断基準を考察し確立することなのであり、その上で認識されたものを用いることが善き優れた人のする仕事。2021/03/13
壱萬参仟縁
39
下巻を先に読んでいたようだ。読書のことで張り切り、骨をおって、旅をするのであれば、家に帰って、家のことをゆるがせないように。そのような旅の目的は無に等しいからだ。旅の目的は人生から苦しみや悲しみを、嘆き、不運や不幸を取り除き、死とは何か、追放とは何か、牢獄とは何か、毒ニンジンとは何かを学んで(42頁)。教育を受けるというのは、物事が起きるがままに起きるように願うことを学ぶこと(88頁)。哲学する者の最重要で第一の仕事は、心象を吟味し、判別し、吟味されていないものは受け入れないこと(124頁)。2021/07/15
かわうそ
38
2年前に読んだ時はあまり面白いと感じなかった。しかし、今回読んでみると夢中にこの哲学的議論に没頭してしまった。面白い。ストア派は実は快楽を否定して、苦痛を肯定すると言う禁欲主義とは隔たっているものではないかと感じた。ただ、エピクテトスが言いたいのは自分の現状は神様が配役したものだからそれを受け入れて初めて人は自由になることができるというものだ。であるから自分の意志の自由を何ら否定するものではなくむしろ肯定するのである。意志は最も優れたものであり、意志は全てを支配するのだ。故に善悪も意志の中に存在する。2024/12/22
かわうそ
38
確かに、神は人間に他の動物が持たない理性を与えました。この理性は肯定する一方で、人間だけではなく動物が持っている性欲や食欲については否定する点が気になります。というのも、性欲や食欲についても同様に神が与えたものであるからこれを全て否定することはエピクテトスの思想を自身で揺るがしてしまいかねないです。神が人間に理性と同様に性欲や食欲を与えてくれたのだからそれを目の敵にするのはあまり納得がいっていないです。2022/05/09