出版社内容情報
一八四一年に創刊され,一九九二年まで刊行をつづけた諷刺週刊誌『パンチ』は,イギリスの政治・社会の諸現象を鋭く描きだし,イギリスのユーモアの典型として広く愛読されてきた.本書には,創刊から三○年間の『パンチ』から,ロンドン万博,女性のファッション,テムズ川の汚染等に関する諷刺画を収録,激動の時代相をつたえる.
内容説明
1841年に創刊、1992年まで刊行をつづけた諷刺週刊誌『パンチ』は、イギリスのユーモアの典型として広く愛読されてきた。本書には創刊から30年間の『パンチ』から、ロンドン万博、テムズ川の汚染等に関する諷刺画を収録、激動の時代相をつたえる。図版104枚。
目次
1 飢餓の1840年代
2 鉄道マニアとバブル
3 ロンドン万国博覧会と水晶宮
4 繁栄の裏側―病めるロンドン
5 テムズ川汚染―飲み水の危機
6 子どもの情景
7 女性解放への道―ブルーマー旋風
8 ファッションの季節―クリノリン・スタイル
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
藤月はな(灯れ松明の火)
15
当時のイギリスの状況(貧困、生意気な子供、不便なクノクリン・スタイルと流行り廃りのブルーマスタイル、万国博覧会の裏側、河川汚染など)がテニエールなど絵本画でも有名な画家によって皮肉たっぷりに描かれている。「黒執事」は2巻からヴィクトリア王朝時代を舞台に描いているのでその漫画で知ったことも発見できました。絵についている英文も今の英語で習うような文法とは違うのを見つけるのも新鮮です。残念なのはパンチが20年前に廃刊になってしまったことですT-T2012/10/12
lily
8
世界で最も知られた風刺漫画週刊誌『パンチ』のデッサン集。共通テスト世界史での定番教材でもあるので何かヒントを…とも思ったが、掲載されているのはごくごく一部。よく考えれば150年続いた週刊誌の風刺画掲載数は数えきれないほどであり、すべてを網羅するのは不可能。面白い題材も多いが、風刺画にも関わらず難解なものも多く、当時のヴィクトリア朝第一の知的マルチメディアというのもうなずける。著者の見識の高さも垣間見える一冊。2022/07/30
viola
6
150年もの歴史を持つ『パンチ』誌。ええ、そうなんだ、けっこう最近までだったんだ・・・・・!と驚き。幾つか見たことあるのもあったり、まさかのシェイクスピアが登場したり(笑)、声に出して笑っちゃうようなユーモアのある絵があったり。辛辣すぎて、面白い。そしてただ面白いだけじゃなくって、その後に何を考えるのかが重要なんだよなぁ・・・・・だなんて思ったり。2010/11/15
misui
5
1841年の『パンチ』創刊から30年間のアンソロジー。産業革命から数十年を経て社会の階層化が進み、ヴィクトリア朝は激しい変化による軋みをあげていた。本書に選出されたテーマは、飢餓、鉄道、万国博覧会、衛生、環境汚染、子供、女性解放、ファッションと、繁栄とその裏側を痛烈に描き出している。「政界の大物たちも、『パンチ』誌上で風刺の対象になるのを、むしろ誇りに思い、その機会を望むようになったということである」 鉄道と万国博覧会についてはちょっと掘り下げてみたいかな。2016/02/29
こうず
3
十九世紀のイギリスが、日の沈まぬ大英帝国の繁栄を謳歌する上流階級と、片や過酷な労働と汚れた環境の中で死んでいく底辺の民衆に分かれていたことは朧気ながら知っていた。そのような中で新興の中流階級に支持された『パンチ』の風刺漫画は、諸々の社会矛盾をユーモアを交えて批判するばかりでなく、それを支持する人々の価値観、問題意識をも浮き彫りにするものだったのだろう。同時にそれは、支配階級と被支配階級の二極化ではなく、積極的に国家の政治に眼を向けんとする近代的な『市民』『国民』の成長の記録だったのかもしれないと思う。2013/11/16