出版社内容情報
書簡以外のベートーヴェン自らの手になる日記,覚書,スケッチ帳より主なものを選び収めた.波瀾と苦悩にみちた彼の生涯のなまなましい息吹きがじかに感じとられよう.訳者の解説は書簡集同様,年代を追って各作品(音楽)との関連を明確にしている.彼の人と芸術への理解を深める重要な鍵として書簡集との併読をおすすめする.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Y2K☮
29
衝動買い。勝手なイメージだけど音楽室で見た肖像のせいで「プロ野球における巨人」みたいな存在だと仰ぎ見てしまい、無意識下で遠ざけていた。少し前に村上春樹の影響で一曲ダウンロードしてみて「おっ」となった。モーツァルトよりも力強い。いまもこれを書きつつ交響曲第3番「英雄」を聴いています。エネルギーが沸いてくる! 本書を読んで生涯の一端に触れ、またひとり「弱者の友」に出会えたと嬉しくなった。ホメロスやセネカの引用も豊かで、文学や哲学から掴んだ教養は苦悩を突き抜けて歓喜に至る上で欠かせぬパートナーになると確信した。2020/11/18
アトレーユ
16
ピアノ弾くのがイヤになった時に、たまに読み返すと心が踊る。世界一敬愛するベトベンだけど、彼と音楽の話をしたらまぁ間違いなく衝突するわ(笑) 真面目で偏屈で頑固すぎるのが、行間からにじみ出てる(笑) そんな彼が作り出す、1音1音の意味の重さ、そんな1音ずつで構築された世界。1音にすらならない、音楽といえない小さな、その1ピースが垣間見えるような、あたしにとっては心のバイブル。2016/11/04
双海(ふたみ)
14
再読。「愛だけがーーしかり、愛だけが、おまえに最も幸福な生活を与えることができる。--ああ、神よ、わたしの徳性をかためてくれる女性を、わたしのものとして与えられた女性を、最後に見させたまえ」・「魂の結びつきのない肉の楽しみは獣的なものにすぎぬ。あとに気高い感情のあとかたもなく、むしろ悔恨がのこる」2022/03/05
双海(ふたみ)
14
自らを叱咤激励、鼓舞する章句が多い。「毎朝五時半から朝食まで勉強すること!」・「おまえの芸術にのみ生きよ!今はおまえは(耳の)感覚のために大きい制約を受けているが、これがおまえにとって、唯一つの生き方なのだ」・「静穏と自由は最大の富だ」・「相似た性質の結びつきのうえにこそ真の友情は築かれる」・「愚鈍と貧困はつねに車の両輪の如くである」・「もう一度おまえの芸術のために、社会生活の些事をすべて犠牲にせよ!ああ、万事をしろしめす神!永遠を予見するもの。朽ちて死すべき人間の幸運悲運皆知れり」2020/11/06
壱萬参仟縁
12
1814年に自殺を考えたようだ(28頁)。しかし、「この世でなすべきことは、たくさんある。すぐになせ!」(30頁)と自分に檄を飛ばし、鼓舞していることから、生と死の狭間を揺れ動いていた。それもまた、天才の宿命なのであろう。1815年には、「毎朝五時半から朝食まで勉強すること!」(38頁)。わたくしは生島ヒロシのおはよう一直線を聴く。朝活のススメ。「学問の道にいそしめ、わき道は決して堅き道ではない」(41頁)。学問正道。脇道茨の道、隘路。「報酬が行為の動機でありそれを目当とするような人になるな」(47頁)。2013/12/16