出版社内容情報
インディオの擁護者ラス・カサス最大の論敵にして、スペインの代表的アリストテレス学者が披瀝する、征服戦争是認論の精髄。
内容説明
インディオに対する征服戦争は正当である―。ラス・カサス最大の論敵が披瀝する、征服戦争是認論の精髄。布教への途を掃ききよめ、“文明”を持ちこむための戦争は正当であるとする彼の主張を支えたのは、インディオを憎悪・蔑視する同時代の新世界植民者の眼差しであり、先天的奴隷の存在を認めるアリストテレスの理論であった。果たして、征服戦争は是か非か?
目次
アポロギア(フワン・ヒネース・デ・セプールベダが高名にして博学なセゴビア司教アントニオ・ラミレスの異論に答えて、戦争の正当原因を論じた自著を弁護する書;第一部;第二部)
第二のデモクラテス―戦争の正当原因についての対話(いと賢明なる貴顕テンディーリャ伯爵兼モンデハル侯爵であられるルイス・デ・メンドサ殿に捧げる献詞;第一部;第二部)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
壱萬弐仟縁
38
1550年初出。本当の問題は、私たちがインディオと呼んでいる野蛮人を残忍な習慣、偶像崇拝、それに神に背く儀式から解き放ち、彼らにキリスト教を受け入れる心の準備を整えさせるために、キリスト教徒の支配に服従させるのは正当か否かということ(15頁~)。相手が誰であれ、予告もせずに、あらゆる手だてを尽くしても服従しないと確認されないかぎり、戦争を仕掛けてはならない(17頁)。宣戦布告を禁じる。2015/10/25
ラウリスタ~
13
ラス・カサスのライバル。新大陸をスペインが征服することはキリスト教布教の観点から正当化されるばかりでなく、より大きな悪を小さな悪によって駆逐する、偉業であると主張する。あいつらはどうせ放っておいても毎年二万人を人身御供するのだから、数千人ぐらい戦争で殺そうが、大きな観点からしたらむしろ善、という乱暴にもほどがある理論。征服戦争の正当性を、むしろキリスト教そのものから主張する。旧約聖書の怒れる神を根拠に、神を信ぜぬものはいくらでも殺してよいとまで言うその言い分の、清々しいまでの一方通行さに唖然とする。2015/05/26
うえ
9
西洋がアメリカ大陸に於いて奴隷を正当化する書物。とはいえ反論も多く公に出版されたのは19世紀末とか。アリストテレスら哲学者たちや神学者の論を引きながら先天的奴隷を肯定する。「自然法に従えば、理性を欠いた人々は彼ら以上に人間的で思慮分別を弁えた立派な人たちに服従しなければならない」「偶像崇拝それ自体、キリスト教信者に偶像崇拝者を相手に戦争を仕掛けるのに十分かつ正当な原因を提供するのは明白」「それとは別の理由で、キリスト教徒は偶像崇拝者に戦争を仕掛けることができる…ローマ教皇の権威により、認められているから」2019/09/03
アメヲトコ
5
「新大陸」で暴虐の限りを尽くしたスペイン。ラス・カサスなどから、さすがにやり過ぎではと批判の声が上がってきていた中で、スペイン王室御用司祭であった著者が、スペインによるインディオ征服戦争がいかに正当であるのかを論証しようとした一冊です。偶像崇拝がかなりの論拠とされるあたりは、異教徒である私にはなかなかピンとこないところもありますが、著者の自らの正義を微塵も疑わない書きぶりには、地獄への道は善意で舗装されているという言葉が浮かんできます。2018/01/30
左手爆弾
3
筆者セプールベダは狂っているのか、今日の価値観と大きく異なっているだけなのか。筆者の化身たるデモクラテスは語る。「インディオに対する征服戦争は正当である。彼らは異教の神を信じ、放埒な生活を送り、野蛮な生け贄の儀式を行う。彼らを矯正するにはキリスト教の教えを守らせる必要があり、そのための戦争は必要である。たとえその中で略奪や暴行が生じるにしても、全体の目的が正しいのだから、国家は無実であり、理由を知らない兵士たち個人はたまたま不正を行っているに過ぎない」こうした主張である。2016/03/21