出版社内容情報
普仏戦争は講和するも,国民衛兵を組織したパリの市民・労働者はコミューンを樹立する.この19世紀最大の叛乱は,プロイセンの支援を受けた政府軍の攻撃により72日間で壊滅した.コミューンを祭りとしてとらえ,革命の倫理と美学,歴史性について理論的に考察した本書は,多くの分野に大きな影響を与えた画期的著作である.(全2冊)
内容説明
普仏戦争は講和へ向かうも、パリの市民・労働者はコミューンを樹立する。しかし、さまざまな集団やイデオロギーが交錯するコミューンは、政府軍の攻撃により72日間で壊滅する。コミューンを祭りとしてとらえ、革命の倫理と美学、歴史性について理論的に考察した本書は、多くの分野に影響を与えた画期的著作である。
目次
第1部 スタイルと方法(コミューンのスタイル;マルクス主義的実践概念歴史学と社会学全体史に向かって ほか)
第2部 帝政下の繁栄から革命的状況へ(第二帝政下の経済成長;国家の役割 ほか)
第3部 コミューンのイデオロギーと威信(問題;社会についての民衆的イメージ ほか)
第4部 一八七〇年九月四日から一八七一年三月一八日まで(パリにおける社会の解体;再構造化 ほか)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ラウリスタ~
12
飛ばし読み。パリ・コミューンについて熟知しているフランス人に向けて書かれた本。それをプロレタリア革命の先駆として過度に称賛するマルクス主義的見方を批判したり、第二帝政期の経済成長、そして不思議なことに工業労働者の減少(機械化が進む、パリ周辺はさほど産業革命!という感じでもなかったので産業構造が既に第二次産業からも離れつつある)などの時代背景を考えたり。パリ・コミューンについて時系列的に説明したりすることがなく、かなり文学的文章なので、パリ・コミューン自体について学ぶためにはまず別のを当たった方が良さそう。2023/01/17
どらがあんこ
10
「パリ・コミューン」を出来事として捉えていた私にとって、これを「スタイル」や「フォルム」によって全体的視野で捉えようとする著者の試みは新鮮に映る。熱量がすごい。2018/11/07
Saiid al-Halawi
6
「祭り」としてのコミューン。個人的にはどちらかというとプルードン主義者の奮戦を楽しむ1冊であり、未だにティエールの評価が分からない。2014/01/28
壱萬参仟縁
3
巨大で雄大な祭り(42ページ)。制度の研究は歴史学に、都市集団のは社会学に属す(62ページ)。コミューンは共同体(コミュノーテ)(109ページ)。貧乏人に欠けているのは空間よりも時間(216ページ)。貧乏暇なしなのだから。日本人にとって、貧乏な格差社会の不条理に対してこの史実は何を意味するか。この間の国政選挙では投票率が低過ぎた。選挙は祭りともいえるだろうが、それに参加せず、ボイコットした人が多い。勝ち取った普通選挙をみすみす手放す意味は、民主党に期待して裏切られた分大きかったのだろうが、よくないことだ。2012/12/21
cronoq
3
1871年のパリ・コミューンの成立を、フランス革命以降のフランス社会と種々の思想について述べながら詳細に述べた一冊。「コミューン」がフランス語では普通名詞であること、パリ・コミューンはフランス史に何度も繰り返し登場していることなど、「パリ・コミューン」を理解する助けとなる記述が幾つかあった。特に、「中世のパリ・コミューン」やエティエンヌ・マルセルに関する内容は興味深い。読み進めていると、民主主義と共産主義とは、同根ではないかと思えてくる。とりあえず、コミューンの崩壊を記した下巻を読んでみることとしよう。2012/01/25