出版社内容情報
カミザール戦争とは、ルイ十四世治世の十八世紀初頭、南フランスのセヴェンヌでプロテスタントの農民が信教の自由を要求して蜂起し、国王軍と戦った反乱である。本書は、その指揮官カヴァリエが遺した回想記。わずか二千人の農民が二万五千を超える正規軍を敵にまわして、二年余いかに戦ったかを生きいきと伝える。本邦初訳。
内容説明
十八世紀初頭、南フランスのセヴェンヌ地方でプロテスタントの農民が信教の自由を要求して蜂起し、国王軍と戦った反乱について、その指揮官カヴァリエが遺した回想記。農民が十倍を超える正規軍を敵にまわして、いかに戦ったかを生きいきと伝える。本邦初訳。
目次
1の巻(宗教的迫害の経緯;わたしの少年時代 ほか)
2の巻(聖なる集会;攻防激化 ほか)
3の巻(ロランの健闘;カミザールの名称の由来 ほか)
4の巻(一七〇四年初頭の状況;モンルヴェルとバヴィルの確執 ほか)
補遺(ミールモン侯爵とカミザール;クレメンス十一世の大勅書とアレス司教の教書 ほか)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
姉勤
28
同じ神を崇めようとも、教会という卸しを通さず、神に接触すること、まかりならん。フランスのカトリックとプロテスタントが一応和解した、ナント勅令を廃するルイ14世の勅令によって、再びカトリック教徒によるプロテスタントの迫害と弾圧が深まる。それに反抗を示した若き司令官の戦記的な内容。圧倒的劣勢を、策と謀略で覆し、虐げられた者たちの積年の恨みを晴らす。しかし相手はショッカーでもギャラクターでもなく。神を立讃える詩篇を唱えながら、虐殺には虐殺を持ってす。その頃日本では、赤穂浪士の討ち入りにより、喧嘩両成敗を問う。2019/12/19
松本直哉
23
改宗を強要され嗜虐的なまでの弾圧を受けても、信教の自由を守る意思は堅かった。ナント勅令を廃止してカトリック一色に染めようとするルイ14世に敢然と抗うカミザールらの拠点がかつてカタリ派のそれと同じ南フランスだったのは興味深い。さらに、亡命中のカヴァリエはスイスの山奥でひっそりと信仰を守るヴァルド派の人々にも温かく迎えられる。カトリックへの異議申し立ての伝統が中世以来切れ目なく続いていたことを知る。山岳部の地の利を生かして数で勝る国王の軍隊を翻弄するところ、ルイ王と謁見して堂々と信仰告白するところが印象に残る2017/10/19
ラウリスタ~
12
魔女狩りとかではスペインの印象が強いかもしれないが、実のところもっとも宗教的な迫害が強かったのはフランスだったのかも。1702~04年ぐらいにかけて南仏を中心に発生したプロテスタント側の反乱軍と政府軍との戦闘の記録。プロテスタント側からの貴重な資料らしい。それほど読みづらいものではないし、扱われている内容が内容だけに一読の価値はある。プロテスタント側は報復と称してかなり暴れてはいるように思うのは現代の視点から見るからだろう。内戦を地上における最大の悪と看破したパスカルの慧眼さを再確認。2012/04/24
qoop
8
18世紀初頭、弾圧に苦しむ南仏の新教徒が蜂起して勃発した内戦の経緯を、反乱軍の頭目がまとめた回想。地の利を生かした遊撃戦により正規軍と切り結ぶ様子というミクロな描写のほか、他国との戦争状態にあって多くの戦力を避けないフランスの国情というマクロな視点などが抑えられていて、読み物として分かりやすく面白い。さらにいうと、内憂外患を抱えるブルボン王朝がここから百年を経ずして倒れることを思うと、一種象徴的な出来事だと感じられて興味深くもあった。2018/03/15
Saiid al-Halawi
8
ルイ14世時代のユグノー戦争で、ヴィラールはじめ当時のフランス第1級の軍人たちとゲリラ戦で渡り合うマンガ的展開。ちょうどスペイン継承戦争の裏番組にあたるので、本書終盤には首謀者ジャン・カヴァリエとジョン・チャーチルとかサヴォア公オイゲンなんかとのやり取りも盛り込まれてて最高に面白い。2013/02/16