内容説明
インカの王女を母に、スペイン人征服者を父に持つインカ・ガルシラーソ・デ・ラ・ベーガ(一五三九‐一六一六)。古老の語るかつての栄耀を子守歌に育った著者が、創設から滅亡までの帝国の歴史と、人々の風習・文化とを織り上げ、その全貌を再構成する壮大な年代記。
目次
インカ皇統記の第一の書(多くの世界が存在するのかどうかという疑問、ならびに世界の五つの地帯について;対蹠地点が存在するかどうかについて;新世界はいかにして発見されたかについて;ペルーという名の由来 ほか)
インカ皇統記の第二の書(第二期「インカによる支配期」における偶像崇拝とその起原;われらが主なる真実の神を見出したインカ王たち;インカたちが聖なる場所に十字架を持っていたこと;スペイン人歴史家が誤ってインディオのものとしている多くの神々について ほか)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
塩崎ツトム
5
インカ王室とコンキスタドールの名家の血を継ぐ筆者によるインカ史。父の国であり、自身が教育を受けた旧世界のカトリック信仰に対する無条件な信頼と、母方の血筋の黄金時代に対する憧れが、筆致の中で、複雑に混じりあう。第1巻では、帝国以前から始祖マンコ・カパックの降臨、そして第三代皇帝リュケ・ユパンキの昇天まで。2016/03/29
CCC
5
著者のインカ帝国とキリスト教への誇りが強すぎて信頼出来ないなーと思ったけれど、自分の言葉で語っているところにはかなり好感。語りに魂宿ってる。細かい記述が面白かった。やっぱり魂は細部に宿ります。2014/11/14
不以
4
聞き慣れないことばかりであり、思いの外面白かった。インカ出身である著者の語源から語るインカの風物の話がことさら興味深い。2014/02/25
二升石
2
とりあえずの読了。タイトルから受けるイメージと異なり、皇統と無関係な事柄も含めた在りし日の「インカ」について詳細、かつふんだんな記述がなされている。それに加え、完全にスペイン人カソリック教徒と化したかのような著者の、それでも半分の母国「インカ」へのプライド、哀惜のようなものも垣間見え。なので歴史記述でありながら、割に心惹かれる部分も多い。それにしても母系とは言え、皇帝アタワルパのいとこという著者の血筋には驚く。かつての同胞が最も困苦していた時代に、この本をどう位置付けたくて書いたのか、少し気になる感も。2020/11/25