出版社内容情報
イブン=ハルドゥーンの政治論の基本原理は,王権論すなわち支配権力論にある.本巻では,カリフ制と王権に関する彼自身の政治論を提示し,田舎との対比において都市社会を考察.経済活動と国家との相関関係にも触れる.(全4冊)
内容説明
イブン=ハルドゥーンの政治論の基本原理は王権論すなわち支配権力論にある。本巻は国家を論じた第三章の後半と、都市論を展開する第四章を収録。カリフ制と王権に関する著者自身の政治論を提示し、田舎との対比において都会としての都市社会を考察する。(全四冊)。
目次
第3章 王朝、王権、カリフ位、政府官職およびこれらに伴うあらゆる事項、その基本的提議と補足的提議(続)(イマーム問題に関するシーア派の教義;カリフ位の王権への変質;忠誠の誓いの意味;後継者の指名;カリフの宗教的職掌 ほか)
第4章 市、町、村、およびこれらに類するあらゆる都会文明の形態、そこに生ずる諸事情、ならびにその発展について(王朝があってこそ都市が存在する。都市は王権の副産物である;王朝は都市への定住を促す;大都市や高層記念物を建てうるのは、強力な王権のみである;巨大な記念物は一代で建設されるものではない;都市建設に要する条件とこれを無視した場合の結果について ほか)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Koning
29
王権やらからカリフの話の続きから都市文明的な問題とそういうあたりなのだけど、なんというか、シーア派ディスりばかり記憶に残るという(笑)。うーん(笑)。2015/11/12
ドウ
7
第1巻と連続する話題が過半を占めるが、pp.232-235の王朝の興亡と課税の多寡の関係性への考察に代表されるように、引き続き遊牧から都市への一方通行の変化を基軸に政治・経済・社会を西アジア~北アフリカの歴史と紐付けながら丸ごと俯瞰している。(以下訳者への疑問)初出の人物に註を付しているが、濃淡があるのはなぜ。また数価値など概念的にやや高度なものに註が付いていないのはなぜ。参照した校訂本の註を流用しているのだろうか。何がともあれ、イブン・ハルドゥーンの紡ぎだす歴史=物語にまだまだ身を委ねていきたい。2020/04/12
有沢翔治@文芸同人誌配布中
6
税金、経済の話、戦術の話。特に経済の話は先見の明があり、消費税の話にもつながってくるのではないか。http://blog.livedoor.jp/shoji_arisawa/archives/51509884.html2020/01/02
壱萬弐仟縁
5
戦争の方法は2つ。1つは密集隊形で前進。2つは急襲と退却(213ページ)。いずれにせよ、戦争はやってはいけないが、部族や王朝の存亡をかけてとかいうのでやり続けてきたのだろう。奢侈と王権で王朝は滅ぶ(272ページ)。現代国家にも通じるものがある。王朝末期に疫病や飢饉(291ページ~)。庶民がいかれれば全体もダメになるのだな。文化とは、生活活動が反復され発達して行くうちに形成される生活様相(475-6ページ)。奢侈の追求というのが文化という捉え方をしている(482ページ)。贅沢ができなくては文化でないのか? 2013/01/05
AR読書記録
4
第四章の都市社会についての考察。所得、労働、富、市場、需要と供給、価格、租税、不動産... 思わず、いつ書かれたものだっけ?と確認したくなる、今と変わらぬ感じの都市の姿、またその分析に、驚いた。そういや中世イスラム世界のイメージなんてものもさっぱり持っていなかったしな。不明を恥じる。でもたまに「予言詩」「占い」についてとか、一巻では「超能力者」「霊感と夢」とかの話なんかが、さらりと入ってきたりするところも好き。イスラームの教えというのは、自分の“宗教”の概念とはだいぶ違いそうというのは少しずつ感じる。2015/01/23