出版社内容情報
二百年前のパリの臭いを嗅ぎ,ぬかるみを疾駆する馬車の騒音や,物売りの声に身をつつまれる――まさにそんな思いに読者を引きこむのがこの一書.革命前夜のパリの街を隈なく歩きまわった作家メルシエ(一七四〇‐一八一四)が,大都市に生きる人々の姿をヴィヴィッドに描きだした貴重な記録.本邦初訳.収録図版多数.
内容説明
珍味佳肴に目を輝かせる美食家の飽食ぶり、場末のいかがわしい酒場にたむろする乞食の集団、そしてまたや繁文縟礼をこととする役人たち…。「私はこの本を足で書きあげた」と自負するメルシエの言葉どおり、あらゆる場所あらゆる階層に踏みこんでゆく彼の筆は、パリをおおう不平等、奢侈、悪徳、頽廃、貧困をあばきだす。
目次
4 食の世界(食通;中央市場;菓子屋・焼肉屋;牡蠣;四旬節中の肉料理 ほか)
5 モードと文化(モードを売る女たち;お作法の先生;黒人の子ども;小学校;経験医 ほか)
6 司法・警察・税金(裁判所;商事裁判所;民事代官屋敷;代訴人・執達吏;公証人 ほか)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
刳森伸一
5
華々しいイメージのあるパリも、一皮むけば、目を背けたくなるほどの貧困と悪臭とが広がっていた。上流階級の生活も描かれてなくもないが、基本的には庶民と貧困層とを描いており、同時代の小説を読んだだけでは分かり難い、当時の風俗や文化、そして情景などを知る上で恰好の書物と言えると思う。もちろん、メルシエというフィルタを介したものであるし、明らかな誇張などもあるが、それを差し引いても十分なお釣りがくる。現代とは色々と異なるが、特に衛生環境に対する考え方が根本から違うなと思った。2021/03/06
彬
2
上巻に引き続きパリのタブローを綴っているが、上巻よりもより一層著者の主観が強く出ているように感じた。事実と主観がミックスして、資料と共に愉快な読み物になっている感じだ。これについては、訳者も同感だったらしく、いや訳者の方がより強く感じたんじゃないだろうか。批判的な見方が強くなっているものの、当時のパリの情景を知るのには良いものだと思う。2010/04/19
うずまき
2
あくまでも、メルシエの感情を通過して描かれたパリ。風俗史としては、他の物も並列して読まないとベールは薄くならない。でもパリっつーのはカオスだからこそ面白いと思うんで、そのカオスっぷりを目の当たりに出来るあたり、やっぱりこの本は面白いんだと思うのよー。全文読んでみたくなるなぁ…そこにこそ色々隠れていそうな気がする(邦訳は無し?)2009/12/30
オペラ座のカニ人
0
18世紀のパリで現代と同じように教育や税金問題などについて考えることは変わらない。通信が発展して瞬時に分かる時代とそうでない時代でどちらが幸せであったのかわからん、と思った。2021/07/27
ビタミン
0
★★★☆☆2020/05/06