出版社内容情報
明治九年から二十六年間,東大医学部のお雇い教師であったドイツ人医師ベルツ(一八四九‐一九一三)は皇室や伊藤博文・井上馨ら多くの高官をはじめとしてあらゆる階層の人々と接した.それがこの日記を明治裏面史の興味深い記録としているが,何よりも我々をうつのは日本を愛してやまなかったベルツその人の姿である. (解説 酒井シヅ)
内容説明
明治9年エルウィン・ベルツ(1849‐1913)は東大医学部の「お雇い教師」として招かれ、以来いく度かの帰国をはさんで滞日29年におよんだ。この日記は原題を「黎明期日本における一ドイツ人医師の生活」といい、かれが日本人妻ハナとの間にもうけた長男トクの編になるもの。上巻には来日直前から日露開戦前夜までの記事をおさめる。
目次
第1編 渡日まで
第2編 異郷にて
第3編 第二の故郷
第4編 教職を退くまで
第5編 フランス領インドシナ・韓国へ研究の旅
日本における反独感情とその誘因
第6編 戦雲急
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
lily
97
またもや、とんでもなく面白い日記に出逢ってしまった。外国人からの冷静で公平で客観的で誠実でリアルな時代に生きた生の声はどんな立派な学者の歴史書よりも躍動感があり、勝る。皇室、政治家とも密な信頼関係を築いていたのだから尚更だ。日本女性の容姿についての絶賛するベルツの声が最も生き生きとしてみえる点も面白い。休みを与えられない程の無意味な会議好きな日本人に困惑したり、幼き娘の死に打ちひしがれたり、常に世界情勢を心配したり、ベルツの感情の波に揺られる心地良さ、飽きない。2021/03/19
KAZOO
92
この本は学生時代に政治学の参考資料として示されていたので当時から幾度も読み直しています。東大医学部の教師として日本に来たベルツが政治家などを医師として診察したことなどが書かれていてある意味外国人から見た日本の指導者などの人物論にもなっています。日本人を妻として日本のことをかなり研究したようで、上巻は日露戦争の直前までが述べられています。2023/08/22
本の蟲
13
明治9年からお雇い外国人として現東大医学部で教えたドイツ人医師エルヴィン・フォン・ベルツの日記。何度か帰国したものの、日本での生活は29年に及ぶ。日本における近代医学の基礎を育てただけでなく、草津温泉を世界に紹介して温泉保養地づくりに尽力し、西洋化に邁進するあまり自国の文化や歴史を軽視する、開国直後の日本人を批判し、天皇家や閣僚の診察を行ってその活動を支えた、まこと日本人は足をむけて寝られない程世話になった御仁。上巻は西南戦争、憲法発布、条約改正、大津事件、日清戦争、日英同盟、日露戦争直前まで(続2021/10/06
isao_key
9
幕末から明治にかけて夥しい数の外国人が日本を訪れた。その中でもベルツほど長く日本に滞在した人はいない。足掛け26年にも及んだ。これは小泉八雲の来日から死去までの14年に比べても格段に長い。日記を読むとベルツが本職の立派な医者だけでなく、非常に優れた観察者であり正義感の強い人物であることがわかる。上巻は1876年東大に招聘されるいきさつから1904年の日露戦争直前の社会の様子までが記されている。ベルツは日本人の妻ハナを伴侶にし、自らも日本語を理解し様々な場所に赴いた。また尊大ぶった西洋人をなによりも嫌った。2013/01/30
馬咲
6
医学に留まらない知見に加え、政府要人や外国公使との広い交流で養われた日本社会、国際政治への観察眼は鋭い。日本の文芸への忌憚のない批評も面白い。九代目團十郎を日本の「役者」の社会的地位を向上させた人物と称賛し、この事を近代日本の社会的変革の顕著な例としているのが印象的。ドイツについては、ヴィルヘルム二世やドイツ駐日公使の日本人への無理解を始め、皇帝の偏執ぶりが反映された外交方針によって次第に祖国が孤立することへの懸念が見られる。時折挟まる家族や友人、教え子との親交の記述がこちらの気持ちをほぐしてくれた。2023/05/04
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