出版社内容情報
ロシアの海軍士官ゴロヴニン(1776‐1831)は,千島南部測量の命を受け,1811年にエトロフ,クナシリに寄港して松前藩にとらわれ,2年3カ月にわたって抑留された.本書はこの間の興味ある記録で,当時の日本の風俗,習慣,宗教,社会,政治等の実状をよく伝える.早くに世界各国語に翻訳され,日本でも文政8(1825)年に紹介された.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
isao_key
8
『日本幽囚記』の眼目は、上中下巻の中で実は下巻にあるのではないかと思うほど、ゴローニンによるきわめて優れた深遠な日本人論が述べられている。また後半にはゴローニンを連れ戻すべく奮闘したディアナ号副艦長であったリコルドの手記が収められている。ゴローニンたちが捕らえられてから、国後島で高田屋嘉兵衛と4名の手下を代わりに捕らえる。その後ロシアと日本の何度もの交渉を経て、全員ロシアに帰国するところまでが描かれている。ここでの主役は嘉兵衛である。豪胆や男気を持ち合わせた立派な人柄に、リコルド以下すっかり魅了された。2014/04/02
シンドバッド
4
全3巻の中では、この巻の艦長ゴロヴニンの手記の日本国及び日本人論が興味深く読めた。2015/10/01
なちょす
2
もしこの人口多く、聡明厚利で、模倣力があり、忍耐強く、仕事好きで、何でもできる国民の上に、我が国のピョートルほどの王者が君臨したならば、多年を要せずして、日本を全東洋に君臨する国家たらしめるであらう。 やっと読了。下巻はゴロヴニンの日本解説とリコルドの手記。スリリングな上・中巻に比べると少し退屈な内容だったが、リコルド編で高田屋嘉兵衛が出てきて全てが変わった。オロシア勢を圧巻した彦助の流暢なロシア語。それにしてもすごい本だった・・・。「菜の花の沖」読まねば!2018/06/26
貴人
1
司馬さんの「菜の花の沖」でロシアに連れていかられた高田嘉兵衛、彼の対象にいたゴローニンの日本論評。日本人に騙されて囚われながらも、日本人の民俗、風習、自然、文化、宗教、学問などについて恐ろしく詳しく記述した本書は、読むほどに著者の人間力の凄さに感心させられる。補虜になり明日どうなるかもわからない状態にありながら、彼の日本人に向けられるまなざしは平静で愛情に満ちている。嘉経兵衛もそうだが、人間極限状態に陥ると地が出るというが、この二人はなんとドデカイ男であろうか。2014/10/04
莉野
1
ゴロウニンが当の日本に捕らえたのに凄く公平な見方をしているのには本当に頭が下がる思いだった。西洋様式が浸透している現代で生きている私にとって、当時の江戸を西洋人の側から見ているこの本は日本に変わらずにある『暗黙の了解』の思想、様式ともうなされていない行事や生活様式のどちらも気付かせてくれた。この視点の方がかえって解りやすいと思った。読了後、久々に達成感を味わった。日本とロシア、歴史の授業には出てこないけど、お互い望んではいなかったけど確かに交わった瞬間があったことを私は忘れない。“ウラー!ディアナ!”2009/04/21
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