出版社内容情報
大拙本人が、自身の代表作とした著作。戦時下の緊迫した状況下に書かれた。禅を「思想」、「行為」、「問答」の三テーマに分けて、禅の古典籍を引用しながら、言葉を超えた禅思想の在り処を言葉によって縦横に説き示す。今回初めて、通読を容易にすべく引用漢文に訓読文を大幅に追加注記した(解説=横田南嶺・解題=小川隆)
内容説明
「禅」ぬきに大拙は語れない。そして、本書をぬきに「大拙の禅」は語れない。大拙自身が生前自ら「会心の作」と認めた一書。禅の古典を縦横に引きながら、大拙が自身の禅思想の第一義を存分に説く。通読を容易にすべく、今回、振り仮名と訓読を大幅に追加した。
目次
第1篇 禅思想―無知の知‐無分別の分別(まえがき;二入四行観;安心法門;信心銘;頓悟無生般若頌 ほか)
第2篇 禅行為―無功用の行為‐無作の作(無功徳;超個我;個と超個との矛盾;矛盾と芝居;超個の論理 ほか)
第3篇 禅問答
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
逆丸カツハ
23
流し読みしてしまった。自分で書いた本で言ってることはあながち間違っていない気はした。読んでいてぼんやりと自分は世俗から抜け出すこともできず、世俗に浸かり切ることもできないどっちつかずだなぁと思った。2024/08/03
roughfractus02
8
知性が分け、隔て、計り、比較する際の単位は個である。一方、個がこの「分別計較」を行うためには、他の個が必要となる。個は知性の計測対象として存立するゆえに、他の個との間に相対的で不安定な状態を作り、「安心」は得られない。著者はこの知的で不安定な状態を「心」と呼び、「安心」を得る状態を「無心の心」と呼ぶ。両者が対立しないのは「無心の心」を得てなお「心」に立ち戻るのが禅行為だからである。超個の個、無分別の分別、無作の作は全て同じことを指す。が、それは個のように言葉で指示できないあらゆるものの関係の網の目である。2021/03/20
どら猫さとっち
7
鈴木大拙の禅のすべてが、この一冊にあるといっても過言ではないだろう会心作、と言っている一冊。本書は、禅を思想、行為、問答の3つに分けて、禅について論じている。とはいえ、普段から禅に接していない自分には、本書は理解できない部分もあったが、背筋がピンと張った感じもあった。多分、これからもずっと付き合うだろう、大切な一冊になるかもしれない。
amanon
2
再読本。特に第一章は、知らない単語だらけで、しかも注釈なしで殆ど字面を読んでいただけという塩梅。それでも何か惹かれるものを覚え、ひたすら読み進めていた感が。やはり頭で理解しようと思うのではなく、体で感じ取っていくものなのか?禅とはもともとそういうものだというし。それは本書で繰り返され、解説でも言及される「無分別の分別」という言葉に象徴されるかも。この言葉だけでなく、他にも著者の友人である西田を思わせる箇所が少なからずあり、二人が互いに影響を与えあったことが窺える。また、本書が書かれた時代背景が興味深い。2022/07/05
amanon
2
理解の程を殆ど気にせず、ただ闇雲に読み進めていたという感じか。禅という一般に馴染み難い分野の本に注釈が一切無いというのに、かなりの不満を覚えるが、細かい語の解釈に囚われず、ただひたすら読み込めということなのか?という気もする。夥しいまでの、分かったようで分からない禅問答の引用。それに加えて、難解な漢用語がこれでもか、というくらいに頻出する。それでいて注釈なし。でも何故か読み進めてしまうという吸引力があるということだろう。また、本書が著者が70代の頃に書かれたという事実にも驚愕。一生の伴侶になる気もする。2021/05/03