出版社内容情報
現代仏教哲学の頂点をなす著作であり,著者が到達した境地が遺憾なく示される.日本人の真の宗教意識,日本的霊性は,鎌倉時代に禅と浄土系思想によって初めて明白に顕現し,その霊性的自覚が現在に及ぶと述べる.著者は,日本の仏教徒には仏教という文化財を世界に伝える使命があると考え,本書もその一環として書かれた.
内容説明
現代仏教学の頂点をなす著作であり、著者が到達した境地が遺憾なく示される。日本人の真の宗教意識、日本的霊性は、鎌倉時代に禅と浄土系思想によって初めて明白に顕現し、その霊性的自覚が現在に及ぶと述べる。大拙(1870‐1966)は、日本の仏教徒には仏教という文化財を世界に伝える使命があると考え、本書もその一環として書かれた。
目次
日本的霊性につきて
第1篇 鎌倉時代と日本的霊性(情性的生活;日本的霊性の自覚―鎌倉時代)
第2篇 日本的霊性の顕現(日本的霊性の胎動と仏教;霊性;日本的霊性の主体性)
第3篇 法然上人と念仏称名(平家の没落;浄土系思想の様相;念仏と「文盲」;念仏称名)
第4篇 妙好人(赤尾の道宗;浅原才市)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
molysk
69
霊性とは何か。精神と物質の二元的対立を超越したところに、霊性は存在する。あるいは、人間の精神活動で、感性、情性、知性、意欲という心的作用では説明できないはたらきである。我々の心の最も奥深いところにある、心の本体である。日本的霊性とは何か。日本民族の霊性は、浄土系思想と禅が、もっとも純粋な姿であるという。禅に関する説明は他書に任せて、本書は浄土系思想の解説に重きを置く。親鸞は配流先の越後や関東で農民に教えを説く中で、大地と生きる思想を深めた。そして、武装した農民である鎌倉武士を、宗教に目覚めさせたのだ。2024/02/25
esop
68
精神は分別意識を基礎としているが、霊性は無分別智である/霊性の覚醒は個人的経験で、最も具体性に富んだものである/日本的霊性の情性方面に顕現したのは浄土系的経験である。またその知性方面に出頭したのが日本人の生活の禅である/浄土系的日本霊性ーいつも個己の方向に超個の人を見る/日本的霊性をまず仏教から離しておいてーたまたま仏教にぶつかって霊性は仏教の上にどんな力を示したか/煩悩具足が具体的事実として体験せられるとき、信心決定の機がおのずから出るのである/わしが阿弥陀になるじゃない、阿弥陀の方からわしになる2024/09/27
井月 奎(いづき けい)
47
「日本的霊性」とは記紀万葉において土着の信仰心が形を現し、その当時に入ってきた仏教が平安時代での日本的美意識と退廃的な世界観を経てのちに鎌倉時代の武士社会においてはっきりと顕在した哲学的克己心、宗教観、死生観と人間以上の存在に帰依する人類愛のこと、そうとらえました。最終章の妙好人、浅原才市のそぼくな阿弥陀仏への詩が読み解きを、この読書への歩むべき道を示唆してくれました。読み落としは大きいものがあるはずで再読すれば枝葉は増えると思いますが、幹は、その木の種は間違っていないはずだ、そう信じて頁を閉じました。2020/04/26
獺祭魚の食客@鯨鯢
43
「禅」を世界に広めた知の巨人の代表作の一つです。禅はインドの達磨大師に由来し日本に渡来しましたが、西洋人は禅と言えば鎌倉仏教の座禅を想起するほど日本オリジナルだと思っています。 禅は瞑想といった、近代合理主義の行き詰まりに悩む現代人にとってと「自己回復」の手法としてとても有効ものだと思います。 日本人は文明のオリジナリティはないが、それを純化して精緻にする能力に長けていると思いますが、これも発祥の地で途絶えた思想を現代に華開かせている成功例の一つとしてとても感慨深く思います。2019/09/09
アミアンの和約
35
仏教学者で自身もお坊さんであった鈴木大拙の代表作。平安朝までは霊性(宗教観)を自覚していなかった日本人が、鎌倉期に禅宗と浄土宗が入ってきたことでそれに目覚めた。その立役者こそが法然と親鸞だとする。浄土宗のことを詳しく知ることができる。仏教用語が多く、難解な本であった。法然や親鸞の著作を読んでからまた読むのも良いかもしれない。ところで「個己」という見慣れない単語が多く使われていたが、この読み方は「こき」で良いのだろうか?2023/08/24